音楽玉手箱
「DVD=1」 キセル『野音でキセル2』 夏の終わり、不思議な熱を帯びて

キセル『野音でキセル2』
キセル『野音でキセル2』

2015年8月30日に開催された、キセルの2度目となる日比谷野外大音楽堂でのワンマン公演を完全収録した一本。当初はレーベルからの通販のみだったが、多くの反響に応えてこのたび一般リリースとなった。

この日、日比谷には雨が降っていたようだ。しかし、映像には夏の香りがたっぷりと詰まっている。それもそのはず、セットリストは思いっきり夏を意識して組まれていたようだ。

「雨、やんだ?」「夏、行っちゃいましたね」。予想とは裏腹の天候に困惑したような二人のMCに、思わずクスッとさせられるが、しかし、この映像から放たれる「夏」感は、すごい。図らずも、かもしれないが、現実と映像作品の間に生まれる心地よいゆがみの妙を感じる作品となっているのではないか。

ゆるやかにはじまった序盤、徐々に熱を帯びダンサブルな楽曲に身体を揺らす中盤。アレンジが楽しい細野晴臣のカバー『終わりの季節』もよかった。ほどよい倦怠感、声のゆらぎ。予定のない休日に、ゆるり観るのにぴったりだ。

(カクバリズム・2976円+税)=玉木美企子

この商品を購入する



「DVD=2」 大貫妙子『シンフォニックコンサート2016』 美しい、余韻の間をただよう時間

大貫妙子『シンフォニックコンサート2016』
大貫妙子『シンフォニックコンサート2016』

意外にも、自身初となるシンフォニックコンサートだそうだ。編曲・指揮に千住明、演奏には東京ニューシティ管弦楽団を迎えたほか、かねてより大貫のサポートを務めるフェビアン・レザ・パネ、林立夫らもサポートに加わるという豪華な布陣。東京で、一回限りというプレミアもののこのコンサートの模様を収めた一本だ。

圧倒的に美しい大貫の声はしかし、決して均一なものではなく、楽曲ごとに多面的に表情を変化させる「振れ幅」をも持ち合わせているんだーー。オーケストラというベースのうえに展開されるライブだったからだろうか、本作ではとくにそんなことを感じた。『黒のクレール』や『RAIN』などでは、都会的な女性の魅力を、『ピーターラビットとわたし』ではファンタジーにあふれたやさしい夢の世界を、その歌声で感じせてくれる。大貫妙子という一人の女性が歌っていることはもちろんわかるのに、湧き上がる感情も、目の前に立ち現れる風景も、こんなにも違ってくるなんて。すごい。

そして最後の楽曲、『Shall We Dance?』。ふわり美しい音の結晶を投げかけるような大貫の歌声、余韻と余韻の間をいつまでも彷徨っていたくなる名曲だなあと改めて思う。しかも、オーケストラの演奏。こればかりは、生で目に耳にした人がうらやましくなってしまうが、DVDも録音環境が素晴らしく、存分に楽しめた。

(ポニーキャニオン・6000円+税)=玉木美企子

この商品を購入する



「DVD=3」 ピエール・バルー『サラヴァ 時空を越えた散歩、または出逢い ピエール・バルーとブラジル音楽1969〜2003〜』 字幕が少ないという豊かさ

ピエール・バルー『サラヴァ 時空を越えた散歩、または出逢い ピエール・バルーとブラジル音楽1969〜2003〜』
ピエール・バルー『サラヴァ 時空を越えた散歩、または出逢い ピエール・バルーとブラジル音楽1969〜2003〜』

すごい作品に出会ってしまった。いや、むしろなぜ、今まで出会わなかったのだろう?

2016年12月、惜しまれつつこの世を去ったピエール・バルーの追悼発売として、日本3度目のリリースとなった本作。1969年、わずか3日の間でブラジルの伝説的ミュージシャンたちの演奏をとらえた「奇跡の」映像に端を発し、2003年の東京、そして1990年代のブラジルへと「時空を越えた」旅をしながらブラジル音楽の深層に触れていくドキュメンタリー映画だ。

ピエールという一人の異邦人の目に映るブラジルの姿、ブラジル音楽の姿(そしてアフリカの残像)。映像からは彼が心震わせ出逢いの奇跡を味わっていることがそのまま伝わってくるし、いつしか観ている私自身も彼の隣にいて、同じカフェのテーブルについているような気持ちになるのは、この映画にかけられた魔法というほかない。

とにかく、流れてくる音楽はどれも最高に素晴らしい。加えて、その音楽を奏でる人々の人生や、この音楽を育んだブラジルという国の姿までをまるごと写し出しているように思う(きっと、そうにちがいない)。

心憎いのが、日本版である本作の字幕の少なさだ。かろうじて、会話をたどれる程度にしか字幕が出ないことで、言葉の通じない異国の地を訪ねたときのあの、心もとないような、でもだからこそ目の前の世界に感覚を研ぎ澄ます、独特の感覚がよみがえってくる。「私の願いは、あなたを私たちと共に旅に連れていくことです」。ピエールは冒頭でそう語っているが、まさに、まさに、その通りの作品だ。彼の偉大な才能に感謝しつつ、冥福を心から祈りたい。

(コロムビア・マーケティング・2800円+税)=玉木美企子

この商品を購入する



アラーキーの幸福写真
乃木坂/ギャルママ(下)

    スタジオでの撮影が続く。17歳で長男を出産した大工原里美さんは、3人の子どもとカメラ…