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洞口依子・のら猫万華鏡

海水浴と治療法(前編)

 土曜の丑の日が近くなる頃、なぜか海水浴に行きたくなる。  海水浴。なんと素敵な響きだろう。  海の水を浴びる、なんて。  幼い頃よく泳いだ伊豆や湘南の海水浴場。  砂まみれの海の家。  ぬるいラーメンと舌が緑色になるかき氷。  子どもの頃、なんとなくあの海の家が怖くて苦手だった。  肩に綺麗な模様の入ったサングラスのお兄さんの傍で、薄衣を纏った赤い爪のオネエチャンが艶かしく手招きする。  そんな記憶の断片が脳裏に残るあの場所。  少女の私にとって、あの艶かしい手招きとケバい化粧は、天女の如く誘惑的だった。  それはまるで、当時よく観に行ったよみうりランドの「水中バレエ劇場」の羽衣を纏った天女みたいだった。  貸しパラソルの下で浮き輪に座る私は、ネエチャンの誘惑を背中で受けながら、握り飯片手にじっと海を見つめる。  海水の潮の香りがついた手で、母がこさえてくれたふやけた海苔の…[続きを読む]

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七夕と冷やし中華

七夕と冷やし中華

07月07日

 七夕の日として知られる7月7日。  昔、一年に一度のこの日にだけしか恋人とデートしないという女がいた。  不倫の恋をしていたわけでもない。ただ驚異的にロマンチストな女だった。  普段洒落っ気もない女が、耳たぶに真珠のピアスをさし、恋人の待つ夜の帳へ消えて行く。  夏の夜は夢…[続きを読む]

空とぶ新戦艦大和

空とぶ新戦艦大和

06月20日

 梅雨の晴れ間をぬって、銀座7丁目にあるギャラリーへ出かけた。  『新戦艦大和』小説+漫画600ページ試読会/復刻グラフィック展。  小説/原作・梶原一騎氏、挿画・吉田郁也氏、漫画・団鉄也氏による幻の名作『新戦艦大和』の復刻プロジェクトだ。  愉快な年上のトモダチからの一通の…[続きを読む]

瞳に漲る海 満島ひかりという女優

瞳に漲る海 満島ひかりという女優

06月10日

 職業柄、言葉の響きには敏感な私。  なぜか「婀娜(あだ)」(女性のなまめかしく色っぽい様子)という言葉の響きが好きだ。  滅多に使わない言葉だが、数年前に一度だけ、大胆にも発したことがある。  『夏の終わり』(2013年公開 熊切和男監督)という映画のヒロイン・知子を演じた…[続きを読む]

洞口依子

洞口依子(どうぐちよりこ)

女優。1980年、「週刊朝日」11月7日号の表紙を飾り、雑誌「GORO」で篠山紀信の「激写モデル」として芸能界デビュー。85年、映画「ドレミファ娘の血は騒ぐ」(黒沢清監督)の主役に抜擢された。この時共演した伊丹十三監督の「タンポポ」「マルサの女2」に出演。テレビドラマでは92年の「愛という名のもとに」(フジテレビ)、97年の「ふぞろいの林檎たち」(TBS)などで個性的な演技を披露し、女優としての地位を確立した。2004年に子宮頸がんを発病したが克服し、06年に復帰。07年には闘病生活を綴った「子宮会議」を発刊。女優業の傍ら、ウクレレバンド「パイティティ」でライブ活動もしている。週刊文春「シネマチャート」連載中。