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黄色いチラシのイメージや宣伝コピーから、ゲイを告白した父親に翻弄される息子を描いたドタバタ・コメディーかと思いきや…実際は、アート系のラブストーリーだった。近年は映画に限らず、トリッキーな構成にダマされるタイプの作品が流行っているが、まさか宣伝に心地よくダマされるとは!
マイク・ミルズ監督の実話がベースになっている。母親に先立たれた父親が、75歳にしてカミングアウト。新たな人生を謳歌し出した彼に、38歳でいまだ独身の主人公が戸惑いながらも触発されて…。タイトル通り“人生の初心者たち”が、新たな一歩を踏み出す姿が描かれる。
変哲もない建物の庭や室内を捉えた映像が美しい。窓や家具のデコレーションと、構図や光のバランスが絶妙なのだ。よくある風景や平凡な被写体を美しく切り取るには、何よりもセンスが必要。グラフィックデザイナーでもあるミルズ監督の手腕だろう。
そして、ユアン・マクレガーとメラニー・ロランの金髪カップルも負けじと絶妙。美男美女の恋模様というのは、昔から外国映画を楽しむ際の必須アイテムだったことを思い出させてくれる。舞台はアメリカだけど、どこかヨーロッパの薫るラブストーリーだけに、本来の客層がダマされて見に行かないのでは?と心配になる。★★★★★(外山真也)
【データ】
監督・脚本:マイク・ミルズ
出演:ユアン・マクレガー、クリストファー・プラマー、メラニー・ロラン
2月4日(土)から全国公開

(C)ジャンゴフィルム、真利子哲也
決定的な1カットを持つ映画がある。本作がまさにそう。クライマックスの海辺のシーンで映し出されるその1カットは、誰が見てもただそれだけが撮りたくて製作されたんだろうと思えるほどに、鮮烈だ。
東京芸大出身者の中でもとりわけ尖った才能を持つ、『イエローキッド』の真利子哲也監督による42分の中編である。強盗に関与した青年が海辺で練炭自殺を図り、翌朝、同じ場所でアイドルグループのPVが撮影される様子が、実際の事件をヒントに描かれる。
監督自身も「その1ショットが見たかった」と、本作のアイデアが“決定的な1カット”から始まったことを強調し、その言葉に違わない出来栄えの1カットを披露して見せる。けれども、本作を42分の中編のまま劇場公開することには、疑問が残る。だって、この映画には“前編”が必要だから。
主人公がなぜ強盗に走るほど追い込まれ、自殺しなければならなかったのか? その背景がもっと時間をかけて描き込まれ、観客が主人公に感情移入した状態で決定的な1カットに遭遇した方が、衝撃ははるかに大きかったはず。ジム・ジャームッシュの『ストレンジャー・ザン・パラダイス』が、第1部「新世界」が評価されて長編に発展したように、本作もいつの日か堂々の長編に仕立て直されることを期待したい。★★★★☆(外山真也)
【データ】
監督・脚本・編集:真利子哲也
出演:宮崎将、山中崇、ももいろクローバー
2月4日(土)から全国順次公開

(C)2011 東京プレイボーイクラブ
鮮烈な商業映画デビュー作と言えるだろう。監督は、2010年のゆうばりファンタスティック映画祭で自主制作の『青春墓場~明日と一緒に歩くのだ~』がグランプリを獲得した25歳の奥田庸介。野心も個性も持ち合わせ、テクニックだって既に一級品である。
舞台は、東京の場末の繁華街。風俗サロンを経営する昔の仲間・成吉を頼って上京した主人公・勝利が、街を牛耳るヤクザ3兄弟を怒らせたことを契機に、店のボーイの恋人・エリ子を巻き込んで事態は思わぬ方向に転がってゆく…。映像表現それ自体が目的の監督ではない。だから演出は、決してストーリーを語るという範疇を踏み外さない。それでも画面が自己主張してしまうところが、才能なのだろう。
白眉は、エリ子がiPodで音楽を聴きながら太宰治を読んでいる背後で、同棲しているボーイが気づかれないうちに荷造りして出ていくワンシーン=ワンカットのユーモア。そして、『てんとう虫のサンバ』が鳴り響くクライマックスだ。倒れたエリ子の背中に血が広がるカットの鮮やかさときたら! 1カット1カットが的確なのに意表を突いてくる監督なのである。あえて例えるなら、タランティーノに近いかも。少なくともエンターテインメント志向で、世界に通用する作家性を兼ね備えている点は共通する。★★★★★(外山真也)
【データ】
監督・脚本:奥田庸介
出演:大森南朋、光石研、臼田あさ美
2月4日(土)から全国順次公開
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