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花まるシネマ
『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』 猿vs猿・人類vs人類の対立が見どころ

(C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
(C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

SF映画の金字塔とされる1968年の『猿の惑星』。そのリブート企画で、「いかにして地球は猿の惑星になったのか?」という前日譚を描くシリーズの第3弾にして、完結編である。新薬開発で生まれたウイルスにより、高度な知能と言語能力を獲得した猿たちと、逆に文明社会が崩壊した人類が全面戦争に突入して2年後。最愛の家族を殺されたシーザーが、復讐心とリーダーとしての使命感との狭間で葛藤する。

面白いのは、対立の構図が猿vs人類というより、猿vs猿、人類vs人類というところ。絶滅の危機に瀕しながら、それでも同種間の争いをやめない人類とは? その本質を問うテーマ性は意外と深い。また、キャッチコピーに「そして、猿の惑星になる。」とあるように、1968年の第1作にどうつながっていくかも大きな見どころ。

監督は、前作『新世紀(ライジング)』に引き続きマット・リーヴス。どうやらこの監督は、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の手法を怪獣映画にハメ込んだ『クローバーフィールド/HAKAISHA』、『ぼくのエリ 200歳の少女』のハリウッド・リメイクだった『モールス』のように、明確なモデルがあった方が手腕を発揮できるらしい。本作では『戦場にかける橋』『大脱走』『地獄の黙示録』といった過去の名作の設定や場面が、猿たちのエピソードに巧妙に置き換えられている。妖精パックを思わせるトリックスター的な新キャラが担う笑いの緩急も効いていて、前作より格段に面白い。★★★★☆(外山真也)

監督:マット・リーヴス

出演:アンディ・サーキス、ウディ・ハレルソン

10月13日(金)から全国公開



『リングサイド・ストーリー』 腐れ縁カップルが引き起こす愛の大騒動

(C)2017 Ringside Partners
(C)2017 Ringside Partners

『百円の恋』が絶賛された武正晴監督が、ボクシングの次に選んだ題材は、“プロレス&K-1”である。佐藤江梨子と瑛太のW主演映画で、瑛太が演じるのは売れない役者のヒデオ。つまり、彼が格闘技と出合って一皮むける同様の展開かというと…さにあらず。

サトエリ扮するもう一人の主人公は、格闘技団体で裏方として働くカナコ。ヒモ同然のヒデオを事実上養っている。裏方? そうか、スーツアクターを主人公にした武監督の出世作『イン・ザ・ヒーロー』とのハイブリッドなのか!と思うと、それもまた違う。

今回は主人公が何かに打ち込んだり達成する話ではなく、格闘技はあくまでも背景で、軸となるのは“ラブコメ”。10年来のもはや腐れ縁のようなカップルが愛を確かめ合う、至ってドメスティックな内容なのに、それが大手格闘技団体を巻き込み、恋の大騒動へと発展していく痛快さ!

にもかかわらず、スラップスティックになるギリギリ手前で踏みとどまるバランス感覚と、何よりヒデオが最後までダメ男のまま成長しないことがリアルで、それによってエンタメとしてしっかり弾けながらも説得力が維持されているのだ。武監督の、職人監督の枠に収まらない作家性を称えたい。

だからこそ、ラストは自転車の二人乗りで走り去る二人を見守るカットで終わってほしかった。その後の説明的な数カットは、蛇足でしかない。★★★★☆(外山真也)

監督:武正晴

出演:佐藤江梨子、瑛太

10月14日(土)から全国順次公開



『立ち去った女』 ディアス監督がまたすごい作品をつくった!


昨年のベネチア映画祭で金獅子賞を受賞したフィリピン映画だ。上映時間は3時間48分。それでもラヴ・ディアス監督にとっては短い部類だという。冤罪で30年間刑務所にいた女性が釈放され、自分を陥れたかつての恋人に復讐しようとする話だ。

この手のワンシーン=ワンカットを基調とした長尺の映画に共通するのは、登場人物たちをその世界ごと静観するような視点である。近年では「スロー・シネマ」と呼ぶらしい。要するに、編集=時空間の省略によって効率的に物語るハリウッド的な作品とは真逆の映画ということになる。

だが、編集が少ない分、逆に編集が際立つ。次のシーンに移行する際の省略などは、むしろ強調されることになる。本作でも、例えば出所シーンが“ない”ことに、意味を読み取ろうとする観客もいることだろう。

その意味で、ハッとするほど美しい昼間の農作業の風景で始まりながら、本作は夜の映画である。「人生の夜」という比喩的な意味ではなく、純粋に、多くの昼間のシーンが省略されているから。それが1940~50年代のフィルムノワール的な肌触りをもたらすが故に、ハリウッド製サスペンス映画との語り口の違いが浮き彫りになるものの、ここには確かに古き良きハリウッドのモノクロ撮影の伝統が受け継がれている。どこかシュールなラストカットでディアスが見せたかったのは、主人公の影の“黒さ”だと思う。

伝統に裏打ちされた独創性。この機会に彼の特集上映を組んでくれないだろうか。★★★★★(外山真也)

監督・脚本・撮影・編集:ラヴ・ディアス

出演:チャロ・サントス・コンシオ、ジョン・ロイド・クルズ

10月14日(土)から全国順次公開



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