花まるシネマ
『ハドソン川の奇跡』 変幻自在のイーストウッド新作

(C)2016 Warner Bros.All Rights Reserved.
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NYのハドソン川に不時着して乗っていた155人全員が助かった2009年の航空機事故を映画化した巨匠イーストウッドの新作だ。同様に実話を基にしていた前作『アメリカン・スナイパー』は、“見る”という行為を映画として突き詰めた傑作中の傑作だったが、今回はどうか?

まず、前作がそうだったように今回も英雄譚ではない。事故そのものよりも事故後の話がメインで、果たして機長の決断は正しかったのか?空港に戻れたのではないかという国家運輸安全委員会との攻防が軸となっている。言い換えるなら、熟練パイロットの経験値vsコンピューターの数値。まるで流行りのプロ棋士vsコンピューターの対局のようだが、この対決の図式と熟練に対するリスペクトは、明らかにイーストウッドの西部劇や刑事ものに通じる主題である。加えて、スピルバーグであれば優に2時間は掛けたであろう内容を96分で過不足なく描き切ってしまうあたりも、ジャンル映画の名手らしい。

面白いのは、トム・ハンクス主演だろう。本作は一見チームプレイを称えているようでいて、実際は孤高の老ガンマンの物語。その意味でも極めてイーストウッド的なのに、ハンクスを起用したことでいつものマッチョ感が程よく中和されて、骨組みはジャンル映画なのに、そのにおいすら消し去っている。今や変幻自在。イーストウッドは、巨匠を超えてもはやバケモノの域である。★★★★★(外山真也)

監督:クリント・イーストウッド

出演:トム・ハンクス、アーロン・エッカート

9月24日(土)から全国公開



『白い帽子の女』 「見ること」の力を描く

(C)2015 UNIVERSAL STUDIOS
(C)2015 UNIVERSAL STUDIOS

アンジーの監督第3作。過去2作で監督としての確かな技量に十分驚かされたが、今回の驚きはそれ以上だった。舞台は1970年代。ヴァカンスで南仏の浜辺を訪れたアメリカ人作家とその妻が、隣室の新婚カップルを壁に見つけた穴から覗き見ることで愛情を取り戻していく。

つまりこれは、見るという行為が持つある種の力を描いた映画だ。はっきり言ってお話はどうでもいいレベルなのだが、代わりに“見る”という映画的なふるまいが手を変え品を変えて積み上げられている。覗き穴だけでなく、意図的に強調されるサングラスも、ホテルのベランダから見下ろす入江の漁船もそうで、本作のほとんどが何かを見るその視線と見ている人だけで成り立っていると言っても過言ではない。アンジーは、見ること=映画だとちゃんと知っているのだ。

そして今回、3作目にして初めて出演を兼ね、しかも夫ブラピとW主演。ついに“監督&主演”である。前作『不屈の男 アンブロークン』での“キリスト教”のモチーフといい、今回の“見る”といい、『チェンジリング』で組んだ俳優出身の偉大な先達の影響を感じずにはいられない。そのイーストウッドがドン・シーゲルとセルジオ・レオーネの薫陶を受けて巨匠になったことを思えば、彼女もまた…。★★★★★(外山真也)

監督・脚本・出演:アンジェリーナ・ジョリー・ピット

撮影:クリスティアン・ベルガー

出演:ブラッド・ピット

9月24日(土)から全国順次公開



『ある天文学者の恋文』 極上の恋愛ミステリー

(C)COPYRIGHT 2015-PACO CINEMATOGRAFICA S.r.L.
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『ニュー・シネマ・パラダイス』『海の上のピアニスト』などで知られるイタリアのジュゼッペ・トルナトーレ監督。その新作は、日本でも大ヒットした前作『鑑定士と顔のない依頼人』に続き恋愛ミステリーだ。彼は“謎”を使って物語に引きずり込む手法が得意で、今回の謎は死んだ相手からまるで思考や行動を見透かされているかのようにメールや手紙、贈り物が届き続けること。

主人公は、大学で天文学を学ぶエイミー。著名な天文学者のエドと密かに恋を続けていた彼女の元に、突然エドの訃報が届くが…。トルナトーレ作品では珍しく女性目線で物語が進み、その意味では『題名のない子守唄』に近いかもしれない。それでも、やはり本作の核となっているのは、いつものように「男が抱く異性への強い憧れや執着」である。

つまりトルナトーレの視点はあくまでもエドの側にあり、彼のエイミーへの執着を彼女の視点から描くという構造なのだ。しかもその執着は、学者が専門分野を極めるような徹底したものであり、なおかつ彼がもうこの世にはいないが故に、かつて見たことがないような、でもトルナトーレらしい極上の恋愛ミステリーへと昇華している。さらに言えば、エドの周到な計画にも隙があるというところが何ともオツで、これもまた男の弱さやカッコ悪さを慈しみを持って描いてきたトルナトーレらしさを際立たせている。★★★★★(外山真也)

監督:ジュゼッペ・トルナトーレ

出演:ジェレミー・アイアンズ、オルガ・キュリレンコ

9月22日(木)から全国公開



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