花まるシネマ
『眼球の夢』 見ることと見ないこと

(C) 2016 Arrete Ton Cinema, Stance Company
(C) 2016 Arrete Ton Cinema, Stance Company

タイトルからも分かる通り「眼球」をめぐる映画である。眼球の写真を撮り続けるヒロインと、その姿を映像で記録する脳神経外科医の映画監督、さらには怪しい眼球コレクターも彼女をつけ狙い…。ピンク四天王の一人・佐藤寿保によるエログロ満載のサスペンスだ。

本作には、映画を映画にする要素があふれている。まずは「眼」。眼は“見る=見られる”という映画の本質を成す身体パーツである。しかも、ここで描かれるのは眼球への執着=フェティシズムであり、肉体性と物へのこだわり(反復)というのも映画的。大写しの眼球やそれを舐める舌、裸体や血といった映画的なイメージが横溢する。

次に、ヒロインは「写真家」であり、同時に記録映画の「被写体」でもある。つまり彼女は、自身が“撮る=撮られる”存在として映画内映画の住人でもあるため(さらにそこに夢も加わる)、虚実という映画的なテーマも体現していることになる。加えて、彼女が撮る対象は、眼球。見ることそのものである。

では、それほど究極の傑作なのか? 実は本作には、ある仕掛けがある。それを解く鍵がヒロインの「私は何も見てないし、何も見たくない」というセリフ。彼女は見られる存在ではあるけれども、彼女自身は見ていなかった。本作には彼女の“視線”が欠落しているのだ。もちろんそれは監督が意図したことではあるけれども、一緒に大事な何かが抜け落ちてしまった気がする。★★★★☆(外山真也)

監督:佐藤寿保

脚本:夢野史郎

出演:万里紗、桜木梨奈、中野剛、PANTA

7月30日(土)から全国順次公開



『ヒマラヤ~地上8,000メートルの絆~』 笑いのある感動作

(C) 2015 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.
(C) 2015 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.

タイトルは「ヒマラヤ」だけど、クライマックスの舞台はエベレスト。昨年11月に日本で封切られたハリウッド映画『エベレスト3D』、今年3月の日本映画『エヴェレスト 神々の山嶺』に続き、またもやである。いずれも高所でロケを敢行した臨場感あふれる映像を売りにしているが、山岳映画はCG全盛の時代に差別化できる対抗馬として重宝なのだろう。だとしても、もはや頂上なし状態のハリウッドの技術進歩を考えると、世界的な山岳映画ブームも今がピーク。ここで見ておかないと、という気になる。

さて、今回は韓国映画。ヒマラヤの完全登頂に成功した伝説的な登山家オム・ホンギルが、エベレストで遭難した後輩隊員の亡骸を家族の下に連れ帰ろうと奮闘する話で、実話に基づく感動作だ。

特に日本版と比べてみた時、韓国映画らしさが際立つ。もちろんそれは“笑い”である。笑いには感情の筋肉をほぐすウォーミングアップ効果があるので、本番での感動をより盛り上げるための常套手段なのだが、日本ではどうしても命を扱う題材だけに笑いなんて不謹慎とみなされがち。だとしても、隣国との文化の違いは許容すべきだし、何より生真面目過ぎて笑えないギャグ映画のようだった日本版よりはずっとマシだ。それに、ベタベタな感動作なのに鼻につかないのも、笑いのおかげである。★★★☆☆(外山真也)

監督:イ・ソクフン

出演:ファン・ジョンミン、チョンウ

7月30日(土)から全国順次公開



『クズとブスとゲス』 日常シーンで活気づく

(C) 2015映画蛮族
(C) 2015映画蛮族

商業映画デビュー作だった『東京プレイボーイクラブ』から4年。奥田庸介が原点である自主映画に立ち返り、クラウドファンディングで資金を調達して撮った新作だ。裏を返せば、傑作『東京プレイボーイ~』をもってしても商業映画のレールに乗れなかったということでもあるのだが。

「クズ」と「ブス」と「ゲス」。社会適応力を欠いた男女3人にヤクザが絡むバイオレンス映画だ。殴り合いやリンチなど過剰な暴力にあふれている。けれども、この映画の魅力はそこではない。間に差し挟まれる何気ない日常シーンの方が面白いのだ。

例えば、恋人同士で一緒に鍋料理を作る際のどうでもいい会話。大麻の売人からハンバーグをごちそうになる食卓。夜の喫茶店で女子学生にちょっかいを出す場面…。そこには常に居心地の悪さやいびつな空気感が漂っているため、物語自体を完全に停滞させるそれらのシーンが、むしろどこかで見たような暴力シーンの数々よりもこの映画を活気づけているのだ。

言い換えるなら、本作には緩急がなく、脚本のバランスも悪い。でもそれは自主映画の特権であり、前作にはなかった居心地の悪さからは、どこか初期の北野武作品にも通じる才能のきらめきが感じられる。その上、俳優としても圧倒的な存在感を見せる奥田監督には、いつか北野武やタランティーノのような大物になってほしい。★★★★☆(外山真也)

監督・脚本・出演:奥田庸介

出演:板橋駿谷、岩田恵里、芦川誠

7月30日(土)から全国順次公開



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