花まるシネマ
『無限の住人』 全編アクションで2時間見せ切る

(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会
(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会

一時期ほどではないにせよ、相変わらずの多作ぶりなのに、外れなし! クオリティーが全く落ちない三池崇史の監督作の中でも、近年では一二を争う出来栄えではないだろうか。沙村広明による異色時代劇漫画の実写化で、望んでもいないのに不老不死の身体にされてしまった侍が、用心棒として亡き妹の面影を持つ少女の仇討ちを手助けしていくというもの。

主演はキムタク。掛け値なしにすごい冒頭の百人斬りの殺陣をはじめ、三池作品らしく一見無駄遣いと言いたくなるほど豪勢な敵役キャストとの対決の数々など、全編見どころの連続である。それは『ドラゴンボール』やRPGさながらで、潔いまでに全編ひたすらアクションのみ。にもかかわらず、単調に陥ることなく2時間見せ切ってしまう三池監督の手腕はさすがというほかない。リアリティーを基調とした殺陣自体の創意工夫もさることながら、CGを多用しながらも、俳優陣の生身の魅力=肉体性を際立たせることによって見る者の潜在意識を刺激する、得意の“エログロ”テーストがここでも効いているのだ。

そして、それを支えるキャスト陣の体当たりの貢献も大きく、一人一人の出番は少なくても一流どころを集めた効果はてきめんで、無駄遣いなどではもちろんなく、見事なコラボレーションが成立している。★★★★★(外山真也)

監督:三池崇史

出演:木村拓哉、杉咲花、福士蒼汰、市原隼人、戸田恵梨香、市川海老蔵

4月29日(土)から全国公開



『草原の河』 厳しいチベットの自然に生きる

(C)GARUDA FILM
(C)GARUDA FILM

ブラピ主演の『セブン・イヤーズ・イン・チベット』やスコセッシ監督作『クンドゥン』など、チベットを舞台にした映画はこれまでにも日本で公開されてきたが、チベット人が監督した映画となると、これが日本初公開だという。高原で牧畜を営む父、母、幼い娘の3人家族が厳しい自然の中で生きる様子が、親子のわだかまりや少女の成長といったささいな日常を丹念にすくい取って描かれる。

良い映画かそうでないかは、役者の演技力でも脚本の善し悪しでもなく、カメラをどこに置くかで決まる。例えば、キアロスタミの“ジグザグ道3部作”を思い起こさせる草原の細道を捉えたロングショット。あるいは、歩く少女の背後から父親のバイクが近づいてくる手前と奥の構図…。

本作で基調となるのは、ロングショットとクローズアップ、そして、手前と奥の構図(その多くで人物が前後に移動する)の3つ。ほぼ3種類の組み合わせだけでできていると言っても過言ではないかもしれない。このシンプルさゆえに、被写体自体の魅力が際立ち、複雑で豊かな表情をまとった映画に成り得たのではないだろうか。

加えて、上海国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した6歳の娘役ヤンチェン・ラモの、決して存在感だけではない確かな演技と、極めつけは子羊の名演技! そんな子供と動物を自在に使いこなす手腕も含めて、キアロスタミの影響を色濃く感じさせる作品である。★★★★☆(外山真也)

監督・脚本:ソンタルジャ

出演:ヤンチェン・ラモ、ルンゼン・ドルマ、グル・ツェテン

4月29日(土)から全国順次公開



『僕とカミンスキーの旅』 凸凹バディムービー

(C)2015 X Filme Creative Pool GmbH / ED Productions Sprl / WDR / Arte / Potemkino / ARRI MEDIA
(C)2015 X Filme Creative Pool GmbH / ED Productions Sprl / WDR / Arte / Potemkino / ARRI MEDIA

『グッバイ、レーニン!』の監督による12年ぶりの新作だ。無名の美術評論家=僕と伝説的な“盲目の画家”=カミンスキーが、珍道中を繰り広げるロードムービー。もがきながら必死に生きる主人公たちを俯瞰し、現代社会を皮肉る異化の視点は今回も健在ながら、語り口はより洗練された上で粘着性を増し、濃密になっている。

冒頭から、『市民ケーン』を彷彿させるモキュメンタリーのテクニックを活用したカミンスキーの紹介に心を鷲づかみにされる。しかも、ギミックに凝ったこの演出のトーンは最後まで一貫し、作品の世界観を強固に保っているのだ。

だが、それ以上に瞠目すべきは、主人公2人の強烈なキャラクター。とりわけ「僕」は、こんな嫌な主人公で大丈夫?と最初は不安になるが、利用するために近づいたカミンスキーに振り回されるようになるに及び、我々との距離感がぐっと近くなる。一方のカミンスキーも最後まで一筋縄ではいかない人物。凸凹バディムービーのような2人の化学反応こそが、本作の一番の面白さだろう。

それにしても、この監督。映画を映画にする術をよく心得ている。単調になりがちな会話の画面をICレコーダー一つで活気づかせ、物が倒れたり落ちたりこぼれたりすることの効果にも自覚的。絵画、記憶の曖昧さ、盲目の登場人物、双子…映画と親和性の高いアイテムがしっかり選ばれ、随所でブラック・ジョークも利いている。12年ぶりとは、寡作過ぎだろう。★★★★★(外山真也)

監督・脚本:ヴォルフガング・ベッカー

原作:ダニエル・ケールマン

出演:ダニエル・ブリュール、イェスパー・クリステンセン

4月29日(土)から全国順次公開



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