
『勝間さん、努力で幸せになれますか』 それぞれの粗を露呈しただけで、この討論、2人ともメリットがなかったと思う。
努力すれば幸せになれる『勝間和代』VSしがみつかない生き方『香山リカ』。350分の討論を対談形式で載せている。
読む前から何となく危惧していたのですヨ、この討論に答えはあるの?
で、個人的な結論だが……これは討論になっていないし、こんな対談に意味はない。
例えるなら、1人はボーリングの、1人は卓球の球を見ながら、「ボール」について議論している感じ。まったく噛み合っていない。対立構造をつくろうとするあまり、お互いに揚げ足を取り合うだけ。
まず、香山さんは弱者の立場に寄りすぎている。「私は努力のできないダメな人間」と主張するが、彼女が医師であり、著書をたくさん出しているのは周知のこと。ダメ人間というのは無理がある。勝間さんは、きれいごとが目立つ。誰もが努力すれば素晴らしい才能を開花できるって、本心?
最終的には、「住む世界が違うんだね」ってこと。うーん、やっぱり意味がないような。
(朝日新聞出版 1000円+税)=尾崎英子

『私のこと、好きだった?』 女性誌『STORY』で連載。兼一の妻の底意地の悪さが、凄いんですヨ。
連ドラを一気に観た後に似た、「堪能!」感とでも言いましょうか。この読み応え、他ではなかなか味わえない。
ヒロイン・美希子は、在京キー局に勤務しているアナウンサー。といっても、独身のアラフォー。看板アナと言われたのも遠い昔、一線を退き、若手の管理を任されている。そんな自分もよし。穏やかにすぎていた美希子の日々が、大学時代の友人・兼一との再会により揺さぶられる。
350ページ、美希子42歳から44歳までの2年間。縦軸は、友情と愛情の間を行き来する兼一との関係。「ケンちゃん」「美希子」と呼び合う、微妙な2人をけしかけるように、さまざまな出来事が起きる。エピソード満載、飽きることがない。また、著者の作品の醍醐味と言えば、人間のいやーな描写。「うわ、やなヤツ」の連続。なのに、読後感スッキリなのはナゼ?
本当に不思議……。さすがでございます、林真理子マジック。
(光文社 1600円+税)=尾崎英子

『Invitation』 この8人が同じクラスだったらすごそう……。学級委員長は小川洋子かな?
当代一の女性作家たちと言って大げさではない。並びは、あいうえお順。ええ、角が立ちますからね……。
この手のアンソロジーは、作家の力量の差が露呈するものだけど、それがない。というのも、すでに作風を確立している作家たち。いずれも個性的で、比べようがない。
ただ、どの作品にも共通してあるのは、女性特有の「凄み」。ある種の「かたくなさ」とも言えるか。
江國香織の『蛾』。夫の喪失によって、それまでの世界からはみ出ていく女のあやうさを描く。桐野夏生の『告白』は時代もの。罪を犯したヤジローはポルトガル船で日本を脱出、遠い異国にたどり着いたが奇妙な日本人の老人に捕まり、暗い過去を聞かされる。人間の不自由さ、どこへ逃げてもしがらみがあるおそろしさ。
ミステリーあり官能あり。物語ごとに、自分の気分も変化する。未読の作家がいれば、入門にいい。Invitation(招待)されてはいかがでしょうか。
(文芸春秋 1400円+税)=尾崎英子
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