新刊レビュー
『おばあちゃんはファッションモデル』渡久地恵美子著、森千波写真 祈りに似た切なる願い

祖母の体調が思わしくなく、父方の田舎に来ている。ここ2、3日が山だと言われたものの、顔を見せに行ったらわずかばかりだが反応があり、誰だよもって数日とか言ったの!生きとるやないけ!と悪態をつく余裕もあった。

盆暮れ正月にしか顔を合わせない程度なので、祖母と私はケンカひとつした記憶もない。ケンカするほど仲良くないのだ。90をとうに過ぎた祖母は、ずいぶん前から私のことが誰だかわからなくなり、私はそのずっと前から、祖母がいま何歳だか何度聞いても覚えられない。

先日、御年94歳の女性のフォトエッセーが発売された。著者は彼女と、彼女の孫娘であるさをり織りアーティストの森千波。森は、祖母をモデルに自身の作品を着せ、写真を撮りInstagramにアップしている。

「おばあちゃんの笑顔を一度でも多く見たい」という理由で始まったこの撮影会。写真の中の「恵美子おばあちゃん」は満面の笑みとチャーミングなポージングで華やかな衣装を着こなしてる。その姿につい自分の祖母を重ねてしまう。

酸素吸入器を外せばあっという間に冷たくなってしまうであろう私の祖母。ページをめくる度に二人が羨ましくもあり、いやちょっと待って、私のおばあちゃんだって生きてるじゃん、と思い直す。

思い出してくれなくても、名前を呼んでくれなくても、私が覚えているし私が名前を呼べばいい。だって生きてるもん。まだ取り返せる。まだ終わっていない。そんなことを思いながら本を閉じた。

笑顔の向こうの、祈りに似た切なる願いが、痛いほどに伝わってくる1冊。おばあちゃんと1日でも長くいたい、いたかったすべての人に。

(飛鳥新社 1111円+税)=アリー・マントワネット)

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『あさえがお』加藤綾子著 振り切っている女の美しさ

フリーアナウンサー加藤綾子による初の著書。これまで報道からバラエティまで、幅広いコンテンツを伝えてきた彼女が、初めて自身のことを語っている。

幼少期のこと、習っていたピアノのこと、今もつきあい続けているアトピー性皮膚炎、アナウンサーを目指したきっかけ、新入社員としての苦悩、週刊誌に自分の写真が載ってしまったこと、そして退社を決意した時のこと……。決して平坦ではなかったであろう彼女の半生が、迷ったときに「心のハンドル」をぎゅっとにぎり直させてくれた33の言葉を軸に語られている。

全体的な印象として、できる限り正直にありたいという意志の強さが感じられた。自身の失敗や未熟さ、そして聖人君子ではいられない瞬間のことも、包み隠さず語っている。

「基本的に悪口や愚痴は言いません。でもきれいごとばかりではいられないときもありますよね」と加藤は語る。さらには相手からの「あの人どう思います?」というような悪口の「振り」も、相手が「単におもしろがるために言っていたり、こちらから悪感情を引き出そうとするような雰囲気であれば、それには一切乗りません」。その凜とした口調から、色んな人がいて、色々な思いをしてきたんだろうな……とつい思いを馳せてしまう。

「信じられぬと嘆くよりも人を信じてなんちゃらかんちゃら」と歌っていたのは某海援隊だけれど、本書にはそんな、ある意味純粋、言ってしまえば生ぬるい言葉は一切出てこない。「それでも人が好き」ともうそぶかない。世の中には信頼できる人とそうじゃない人がいて、誰とでも仲良くあらなくていい。仕事の上での信頼関係はそれはもちろん大切だけど、心の部分は大事な人だけを大事にできたらそれで十分。そんな吹っ切れ感がある。

感情表現が不得意で、人前で泣くのが苦手。結構ガサツでのんびり屋。等身大とか書くと超絶陳腐だけど、でも言葉で自分を自分以上に見せることが何の意味ももたらさないことを、きっと彼女はよく知っているようだ。そんな女が発する言葉は、そら格好いいに決まっている。

(小学館 1200円+税)=アリー・マントワネット

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『今日も世界のどこかでひとりっぷ』ひとりっP責任編集 逞しく、自由に生きるためのひとり旅

一人旅に出て、二度、死にかけたことがある。一度目は二十代前半の頃、北陸のとある海街でのこと。立ち寄った水族館でやっていた「海の仲間と戯れよう」的なコーナーで、イルカのお腹をなでながら「ゴムみたいな触感ですねぇ」と呟いていた時。イルカが水から浮かんで「プハァ……ッ」と、泳げないおっさんの息継ぎのような声を発した。

二度目はその日の夜、泊まった旅館の食堂で、刺身や天ぷらの並ぶ夕食の前に腰掛けた時のこと。視線の先、ぐつぐつと音を立てる一人用の鍋と、それを加熱する固形燃料をぼんやりと見つめていた。

イルカと私と飼育員の周りには家族、カップル、友達グループ。固形燃料を眺める私の周りにも、家族にカップル、不倫カップル。そして目の前には食べきれないほどのごちそう。死にそうというか死にたいというか消えてしまいたいというか、爪弾きにされて世界からポロッとあぶれてしまったような感覚に陥ったのだ。

そんなわけで、一人旅には妙な苦手意識がある。寂しさに負けた敗北感と、自分の心の弱さから目を背けるように、以来なんとなく一人旅をしなくなった。

そんな出来事をふと思い出した。きっかけは本書を手にしたことだ。著者はひとり旅を始めて四半世紀の大ベテラン。350回以上にもわたるひとり旅経験から、この度「究極の女子ひとり旅指南本!!」を上梓した。

how to エアチケット手配から350回繰り返してブラッシュアップされた、旅の必需品の一挙紹介、オススメ旅先のオススメスポットや、さらには過去の失敗談やタクシーを停める時の手の挙げ方まで。女子ひとり旅初心者に捧げる、ありとあらゆる情報がてんこ盛りだ。

ページをめくりながら、羨ましくなる。その自由さが、しなやかさが、明るさが、逞しさが。そして思う。これは単なる旅の本ではない。人生を旅にたとえるというクソ陳腐なことを敢えてするならば、そう、本書は人生を豊かにサバイブするための提案をしている。

いいな、ひとり旅。自由も孤独も寂しさも、めいっぱい味わってみたくなってきた。よし、今年の目標きーめた。香港0泊2日弾丸ツアーの遂行だい! だって人生は思ってる以上に短いんだもんね、ひとりっP先輩。

(集英社 815円+税)=アリー・マントワネット

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アラーキーの幸福写真
乃木坂/ギャルママ(下)

    スタジオでの撮影が続く。17歳で長男を出産した大工原里美さんは、3人の子どもとカメラ…