新刊レビュー
『人間仮免中つづき』卯月妙子著 これを愛と呼ばずして

2012年に発売され、壮絶で切実な日々の物語が大きな反響を呼んだ卯月妙子『人間仮免中』。その続編が発売された。

前作で語られた夫の借金と自殺、AV出演に統合失調症、そして飛び降り自殺未遂、顔面崩壊、失明。著者の波乱に満ちた半生は、羅列しただけでも気が遠くなる。

そして本作で、25歳年上の恋人ボビーはそんな著者の暮らしに寄り添う……じゃない、ガチンコで向き合い、がっぷり四つに組んでいる。

病状が悪化している時のことも壮絶な痴話ゲンカを繰り返している時も、卯月の筆致にはユーモアと希望が感じられる。血を流しながら、命懸けで笑っているように思えるのだ。その視線の先にいるのはきっと、大切な人の存在。こんなことがあったねってあとで笑い合うために描かれているのではないか。そう、本作は私たちへののろけ話であり、二人の思い出のアルバムであり、卯月妙子から夫となったボビーへの、長い長いラブレターだ。人の幸せになんか1ミリも興味なかったはずなのに、深い溜息をつきながら最後のページを閉じた。

生きてるって、最高だ。たとえどんな死が待ち構えていようと、今生きていること、それだけで私たちは希望に満ちている。そして願わくば、生も死もキレイも汚いも全部、この人の全部を抱きしめたい、この人に抱きしめて欲しい、そう思える相手が見つかれば尚のこと良しだな。つまり、あれだ。平たく言うと、くっそー、いいな愛。あのね、愛とか言いたくないんですよ陳腐だから。でもね、これを愛と呼ばずして何を呼ぶ。

もう、おめでとう!最高!(小学館 1400円+税)=アリー・マントワネット



『せいのめざめ』益田ミリ、武田砂鉄著 戻れない日々の成長痛

自分的「会ったら秒速で打ち解けられる(と勝手に思っている)文化人」、益田ミリと武田砂鉄によるエッセー集。テーマは十代の性の目覚め。「目覚め」なだけあって、何の知識も実体験もない、代わりに妄想と見栄と誤った情報がギッチギチに詰めこまれていた、間違いだらけのあの頃を描いたエッセーだ。

赤ちゃんはキスでできると思っている女子。アイドルの写真を斜めにして上から覗き込むとおっぱいが大きくなって、なんなら「中まで見える」ような気がする男子。男性器は、文字通り金色の玉がさくらんぼのように揺れていると思っている女子。AVを観ながら「あり得ねーよな」と言いながら、「では現実ではどういう感じ?」と問われたら一切答えられない男子。経験がないにもかかわらず「この女の人演技だね」「うん」と言い合う女子……。

ニヤニヤと笑いながら読んでいたはずなのに、ページをめくりながらなんともせつない気持ちになってくる。男の子と付き合ったり結婚したりなんて、想像もできなかったあの頃。想像できないくせに、そして果たしてそれがどんなにいいことかそうでもないのかもよく分からないくせに、なんでか「彼氏ほしー」と口癖のように言っていたあの頃。口にしてるくせにいざ自分の目の前に立ちはだかると足がすくんで、でも足がすくんでるのに知りたかったあの頃。自分の中で起きていることが何なのかわからない、けれどこのままではいられないことはわかる。このままでいることを自分の中の衝動が許してくれない。

そんな、忘れていたあの頃の成長痛を思い出させてくれる一冊だ。もう戻れない日々はいつだって眩しくて、なんだか直視できない。(河出書房新社 1300円+税)=アリー・マントワネット



『整形なし! 「鼻プチ」で、ハーフ顔に変身メイク 』Tommy監修 メイクはSNSに向けた時代へ

目は大きければ大きいほどに可愛いとされ、アイプチやカラコン、まつげエクステが流行り、次に顔が小さければ小さいほどにいいってことでシェーディングやハイライトの入れ方が動画サイトにアップされ、そして時代は鼻に突入? たしかに最近シュッとしてればしているほどに美しいとされているような……書店で本書を見つけ、そんなことに思いを馳せていた。

シンクロナイズドスイミングの選手が付ける鼻クリップにヒントを得たという美顔器付きの本書。1日15分装着すれば、いずれハーフのようなシュッとした鼻筋になれるとかなれないとか。

本書には美顔器の特長や(哺乳瓶の先と同じ素材を使っているからお肌に安心!)正しい使い方だけに留まらず、昨今の鼻の流行や(なんでも今は高さよりも鼻先が下を向いていて小鼻の小さい「矢印形」が人気らしい)、美しい鼻を活かしたメイクなどなど、あらゆる角度から「美しい鼻および顔面」を提案している。

中でも気になるのが、ここ最近のメイクの流行。本書でも紹介されているが、立体感?奥行き感?が半端ないのだ。極端な話、小鼻を茶色く塗って鼻を小さく見せる、みたいな荒技。写真だったらまぁ化粧濃いなくらいのグラデーションも、現実で見たらなかなかの違和感かと思われます。これもSNSの台頭や自撮りブームの影響だとは思うけど、現実で対面したときよりも写真に写ったときの顔立ちに焦点を当てたメイクがスタンダードになるとは……。時の流れについて行けない三十路女なのでした。(主婦の友社 1500円+税)=アリー・マントワネット



アラーキーの幸福写真
乃木坂/ギャルママ(下)

    スタジオでの撮影が続く。17歳で長男を出産した大工原里美さんは、3人の子どもとカメラ…