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「サッカーコラム」現実主義で獲得した初タイトル ルヴァン杯決勝、C大阪が理想主義の川崎を下す

2017年11月09日

初優勝を果たし喜ぶC大阪イレブン=埼玉スタジアム
初優勝を果たし喜ぶC大阪イレブン=埼玉スタジアム

日本代表の欧州遠征のため、選手より一足先に自宅のあるフランスに戻っていたハリルホジッチ監督。彼がこの試合をスタジアムで生観戦していたら、おそらくこのような言葉を発したのではないだろうか。

「ほら、私がいつも言っていただろう。『サッカーはポゼッションをすればいいというものじゃない』と」

C大阪=33%、川崎=67%。それぞれのボール保持率だ。これを見ても分かるように、11月4日に行われたルヴァンカップ決勝は川崎がC大阪を一方的に押し込む内容だった。そして、後半のほとんどで川崎の最終ラインの4人全員が相手陣内10メートルに入り込んでいたことには、思わず笑ってしまった。通常、このようなポジション取りはあり得ない。カウンターを警戒するからだ。それでも、結果は2―0でC大阪の勝利。サッカーとは、まことに奥深いスポーツだ。

サッカーに関する価値観は人それぞれだ。勝利しても内容が悪ければだめだという人も当然いる。しかし、年代別の国際大会でここ10年、敗戦のたびに選手たちが「内容では勝っていた」と口にするシーンを何度見ただろう。タイトルを取ることでしか得られない自信というのは確かにあるのだ。その自信の上に内容を積み重ねることで、強豪というのはでき上がっていくのではないだろうか。

くしくも、今回はどちらが勝ってもクラブにとって初戴冠となる試合だった。そして、この決戦は現実主義者と理想主義者の戦いとも言えた。開始早々にスコアが動くという展開がきっかけになったのは疑いようもないが、C大阪は内容を捨てて勝負に徹し、川崎はあくまで自分たちのスタイルを貫いた。それが極端な試合展開を生んだといえる。

カップ戦のファイナルというのは、通常のリーグ戦と違って異様な緊張感があるのだろう。開始直後の50秒、川崎のエドゥアルドが信じられないようなミスを犯す。左サイドからC大阪の丸橋祐介が入れたスローイン。それを柿谷曜一朗がヘッドでそらした浮き球を驚きの空振りだ。「まさか、あそこでミスをするとは思わなかった」。そう言いながらも、いち早くボールに反応した杉本健勇が冷静に右足でゴール隅に流し込んだ。

早過ぎる得点というのは、時に厄介だ。リードしたチームが守りに入った結果、相手の猛攻を受け続ける。それに耐えられず、一度追いつかれると盛り返す力が残っていないということがよくあるのだ。だからだろう。1点をリードした後もC大阪・尹晶煥(ユン・ジョンファン)監督のゲームプランは「ボールを保持しながら試合を運ぶ」だったという。プラン遂行を裏付けるのは、尹監督自身が「すごい能力を持つ」と表現した前線を構成する選手たちの存在だ。柿谷、杉本の2トップと清武弘嗣と水沼宏太の攻撃的MF。それをフォローするのは山口蛍とソウザの2ボランチ。豪華なタレント陣がボールを回そうと思えば、川崎にも十分に対抗できる戦力は備えていた。

しかし、ピッチで戦っているサクラのユニホームたちが選択したのは、リーグ最高のパス回しを誇る川崎を相手に“苦行を強いられる”こと。そう、明らかに受け身となる守備重視だった。その選択を選手たちにさせたのは、川崎に1―5で大敗したおよそ1カ月前のリーグ戦で刻まれた記憶も影響していただろう。

1点を守り切るサッカー。それは代表チームの例を取っても、日本人のメンタリティに適しているとは言い難い。しかし、この日のC大阪は、90分間集中力を途切れさすことなく地道な作業に励んだ。川崎の司令塔・中村憲剛が「死に物狂いで1点を守り切ろうと切り替えてきた」というC大阪の守備は、そして見事に計算されたものだった。

押し込まれることを前提に最終ラインと中盤、前線の3ラインが、ゴール前に引いて守備網をコンパクトに保った。ボールを自ら奪うためのアクションを極力減らし、網にかかったボールだけに反応して体力を温存する。ボール保持の面では圧倒されながらも、本当の意味での決定機を川崎にほとんど与えなかった。そして、試合終了直前にカウンターからダメ押し点を奪うしたたかさは、ある意味でイタリア的だった。

一方、またも準優勝に終わった川崎。J1年間2位3回はまだしも、天皇杯(1度)を含むとカップ戦の決勝で5度も敗れるのは、不運の一言だけで表現できるものではない。もはや、都市伝説の域に達しているのではないだろうか。

それにしても、川崎はいつも、あとちょっとのことで運がない。後半20分、中村が出した浮き球の縦パスで小林悠が抜け出したプレー。その場面をちょうど真横から見ていたのだが、あれは明らかな得点機会阻止。置き去りにされたC大阪の木本恭生が、手で引き倒したファウルだ。あのプレーに対し西村雄一主審が見逃さずにカードを出していたら、その後の展開は間違いなく変わっていたはずだ。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続。






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