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「ITデータコラム」テクノロジーが変えた観戦方法(続) セーリングW杯で採用される「セールトラックス」

2017年11月06日

男子470級 スタートした高柳、磯崎組(7)ら=愛知県蒲郡市沖
男子470級 スタートした高柳、磯崎組(7)ら=愛知県蒲郡市沖

陸地から離れた海上でレースを実施するセーリングについて、前回のコラムで「最も観戦に適していない競技」と紹介した。そして、その弱点を克服する技術的対応として、スマートフォンを使ったトラッキング技術を取り上げた。今回もこの問題についてもう少し掘り下げたい。

10月17日から22日まで愛知県蒲郡市の豊田自動織機海陽ヨットハーバー沖でワールドカップ(W杯)が開催された。2020年東京五輪の正式種目である470級やRSX級など8種目が実施され、日本勢が男女の470級など4種目で計五つのメダルを獲得して盛り上がったが、W杯はこの競技の国際統括団体である国際セーリング連盟(ワールドセーリング=WS)が主催。WSの公式イベントなだけに、運営の中心を担ったのはWS関係者だった。

蒲郡でのW杯でWSは、前回のコラムで紹介したスマートフォンを使ってのトラッキングではなく、専用の小型発信機を利用して出場艇の位置情報を把握するトラッキングシステムを採用した。これによりインターネットの専用サイトでアニメーションのようにレース艇の動きを確認することができる。

「セールトラックス」と名付けられたこのシステムの責任者、フランク・ミタグ氏によると、WSが採用しているトラッキングシステムの誤差は3~5メートル。精度の面では、スマートフォンでのトラッキングと大差ない。実際、スクリーンで見ていると、レースの運営に当たる本部ボートとレース艇が重なる場面があった。それでも、ミタグ氏は「実際の位置と5メートル違っていても、レース艇がそろって5メートル違っていれば、位置関係としては大きな問題ではない」と鷹揚(おうよう)な答えだった。

世界最高峰のヨットレース、アメリカズカップでは精度の高いトラッキングシステムを採用しているが、高価だし、五輪競技で使用するような小型ヨットには大きすぎて搭載できない。ミタグ氏は「アメリカズカップと五輪以外のヨットレースなら、セールトラックスはどんなレースでも経験してきた」と話す。

ミタグ氏が言う「五輪以外」とは次のような事情を意味している。国際オリンピック委員会(IOC)が、放映権を持つ放送局に対してだけ、リアルタイム(ライブ)でのトラッキングデータ使用を認めていて、それ以外の組織や団体によるインターネット上でのライブトラッキングデータの利用を禁じているからだ。

オリンピックの権利はIOCが保持している。さまざまな競技の記録やデータの採取は、IOCのパートナー企業が請け負っており、セールトラックスは豊富な実績を誇っていてもオリンピックのセーリングだけは関与できない。

ただ、現在の枠組みが変化する可能性もありそうだ。ミタグ氏は「選手や監督、コーチからライブトラッキングの要望が出されている。将来的には変わる可能性があるのではないか」と含みを持たせた。

IOCはセーリングを見て楽しめるスポーツに変えることをWSに求めている。蒲郡を訪れていたWSのジャン・ドーソン副会長はIOCからのプレッシャーを認めた上で、二つの対策を取っていると指摘した。

W杯では予選レースの上位10艇で行うメダルレースを、ヨットハーバーから間近に見える海面で実施していたが、それが一つ。インターネット上でのライブ中継にトラッキングデータを組み合わせて、セーリングを知らない人でも楽しめるように分かりやすく見せていることがもう一つの対策だ。

ドーソン副会長は「レースを観客に近づけること、ハーバーを訪れた人たちに見せることが大切だ。それにセーリング経験のない人たちにもセーリングを理解してもらえるようにしたい」と説明した。

今回は蒲郡だったが、来年、再来年にオリンピック会場の江の島で開催するW杯を、ドーソン副会長は「2020年に向けたテストイベント」として位置付けた。セーリングをオリンピックスポーツとして生き残らせるためのWSの取り組みを、来年は江の島で目にすることができる。

山崎 恵司(やまざき・えいじ)のプロフィル 1955年生まれ。79年に共同通信運動部に入り、プロ野球を中心に各種スポーツを取材。93年からニューヨーク支局で野茂英雄の大リーグデビューなどを取材。帰国後、福岡支社運動部長、スポーツデータ部長などを務め、現在はオリンピック・パラリンピック室委員。






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