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『組長の妻、はじめます。女ギャング亜弓姐さんの超ワル人生懺悔録』廣末登著 強烈すぎる社会見学

2017年09月29日


表紙の賑やかさからして小説かなーと思って手にしたら、聞き書きのノンフィクションだそうで。

本書は、女性では珍しいギャングの首領として、裏社会、大阪府警で知らぬ者なしのナニワの猛女の波乱爆笑の半生が語り口調で書かれている。

ヤクザの家に生まれ、転校を繰り返した少女時代。故郷の大阪に帰ることになってからリアル「積み木くずし」状態の従姉の影響で不良の道へ。中学生でシンナー、万引き、警察のお世話デビューを果たしているから驚く。はやっ。開始まだ26ページですよ。

それからあれよあれよと悪い仲間とつるむようになり、高校は1カ月で退学処分となった(シンナーでラリって、注意してきた教師をうっかり蹴飛ばし階段から落としたそうな……)。

働き始めてから彼女は覚醒剤にハマり、その資金を稼ぐため自動車窃盗を始める。そして始まる「公園で木の実を拾うような感覚で」車泥棒をする日々(ちょっと言い方かわいすぎません?)。そこから彼女の人生はジェットコースターのように加速していき、気付けば関西圏の悪い人達から「姐さん」と呼ばれるようになる。

エピソードがいちいち凄まじ過ぎて圧倒される。例えば、覚醒剤で完全にキマっちゃってる彼氏が運転する車に乗っていたら(なぜ乗る)、車が民家の塀に突っ込み恥骨を折る、とか。山の中の留置所で話し相手がいなかったときは、巣を張っている蜘蛛と友情を深めた(数日ぶりの再会では生きていたことに涙したそう。まじか)、とか。男女で刑務所のごはんが違うとか(ex.女子は米少なめにデザートあり、男子は豚キムチに米てんこ盛り)、独居房では花の匂いが漂ってきてなぜかと尋ねたらお隣さんが林真須美(!!)だったとか。林真須美は花が好きで、部屋には花がいっぱいだと刑務官は言う。姐さんは林真須美と、塀を挟んで「もう春やなあ……桜がキレイやわ」なんて他愛のない会話を交わしていたんだとか。

三度目の刑務所では「30代後半の女性として恥ずかしくない教養を身に付けようと」冠婚葬祭の本を読み、今度こそまっとうに生きようと出所後に「メロディーハイム」の一室を借りる。がしかし、一瞬で悪のアジトと化してしまい、結局彼女も、関西圏の悪い子電話相談室の窓口のようになって「いま、セコム来たばっかなら、あと7分は大丈夫や。それ以上、そこに居ったらポリ来るで。早う仕事片付けや」などとアドバイスをしている。

笑いながら読み進めていたが、気になる言葉があった。「三つ子の魂百まで」と彼女は言っていたのだ。

「淀んだドブ川の中」を歩いてきた彼女は、土手の上の道、つまりカタギの社会では生きられないと語る。土手の上の人からは「犯罪者」と非難され、土手の下の人からは「裏切者」と言われるかもしれないと恐れる彼女。取り調べでは黙秘どころかお地蔵さんと化し(精神的拷問に打ち勝つ、相当の肝の太さと自制心が必要なんだとか)、刑務所では誰とも群れなかった鉄の心臓を持つ姐さんが、カタギの道へ這い上がることをこんなにも恐れていることが意外だった。

抱腹絶倒で読み切ったが、裏社会の根底にある絶望が、諦めが、やるせなくもあった。どうか、ドブの中から「土手の上」を眺める若者が、そっちに行きたいと願ったとき、背中を押してくれる誰かや、何かがありますように。彼らが自由に生きることを諦めませんように。強烈すぎる社会見学を通して、その世界で生きる彼らが少し、身近に思えるようになった。

(新潮社 1300円+税)=アリー・マントワネット


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