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『漫画 君たちはどう生きるか』原作・吉野源三郎 漫画・羽賀翔一 この手で何を掴もう

2017年09月29日


生まれてはじめて骨を折った。仕事終わりに同い年の上司と「29歳のクリスマス」を観ながらお菓子を食べ、その後帰りの車内で竹内まりやの「FOREVER FRIENDS」をガンガンかけながら「イエーイ! 我らフォーエバーフレンズ!!」と盛り上がり、ごきげんなまま着いた自宅前、雨に濡れた玄関先で転倒し、骨折。全治三カ月。しかも右手首。チーン。

落ち込んだ。自分を責めた。いつ仕事に復帰できるかわからない。ということはいつまでみんなに迷惑をかけるかもわからない。仕事に穴を開けるのは、祖母の葬式以来初めてのことだった。あんなにはしゃいだ自分が憎い。バカバカ! アラフォー間近のくせに雨の中スキップした私のバカ!!

……そんな時に手に取ったのが本書だった。1937年に児童文学者・吉野源三郎により書かれた名著が、80年の時を経て漫画化され、新たな命が吹き込まれたのだ。

主人公の「コペル君」は中学生。物語は彼の叔父さんが近所に引っ越してきた日から始まる。銀座のデパートの屋上から東京の町を見下ろすコペル君と叔父さん。「人間って、分子なのかも……」何気なく呟いたコペル君のその一言から、二人の日々はガラリと色を変えて動き始めるのだった。

人間としてあるべき姿を求める、というと堅苦しかったり説教臭そうだが、本書はそういった啓蒙的な側面は持っていない。「僕たち人間は、自分で自分を決定する力を持っている」、その道を、迷い悩みながら選び進むことこそが、「正しい道」なのだと叔父さんはコペル君に語っている。どう生きるのが正解かは本書にはほとんど書かれておらず、強いていうなら正解を考え続けることが正解だと言っているようだ。

物語の後半、友達を裏切ってしまった自責の念に駆られるコペル君に、母親が少女時代の忘れられない思い出を話すシーンがある。「それを忘れられなくて、いやな気持ちになる……?」そう尋ねるコペル君にお母さんは笑顔で答える。「ううん、そんな自分にお礼を言いたいくらいなのよ……」と。それを聞いてコペル君は立ち上がり前を向く。自分の弱さを受け入れ、自分がしてしまったことを認め、真っ直ぐに友達に謝ることを決意したのだ。その表情は清々しく、とても明るい。

苦い経験も自己嫌悪も、傷付けられたことも傷付けてしまった人も、感情に振り回されることなく、誠心誠意向き合うことができたら、それらはすべて私たちを豊かにしてくれる。そんなことを教えてくれた一冊だった。さあ、私はこの動かない右手で、どんな宝物を掴もうか。

(マガジンハウス 1300円+税)=アリー・マントワネット


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