47NEWS >  エンタメ >  エンタメスポーツ >  「サッカーコラム」新しい才能が左足で美しい2得点 J1浦和を翻弄した鳥栖の18歳、田川亨介

「サッカーコラム」新しい才能が左足で美しい2得点 J1浦和を翻弄した鳥栖の18歳、田川亨介

2017年09月28日

浦和―鳥栖 前半、先制ゴールを決め、喜ぶ鳥栖・田川(右)=埼玉スタジアム
浦和―鳥栖 前半、先制ゴールを決め、喜ぶ鳥栖・田川(右)=埼玉スタジアム

大半の人は「新しもの好き」だ。だから、有名選手を相手にした若い選手が恐れを知らないプレーで驚きをもたらす場面に遭遇すると、つい胸をときめかせてしまう。

新しいタレントの出現。Jリーグを舞台にすれば、2004年に当時J1だった東京Vからデビューした森本貴幸は衝撃的だった。現在はJ1川崎に在籍する森本はその時、まだ中学3年生。15歳10カ月6日だった。ちなみに、「Jリーグ」としての最年少出場記録は昨年、J3出場を飾ったFC東京の久保建英(15歳5カ月1日)に更新された。

森本と久保。イタリアとスペインというラテンのサッカーの本場で、経験を積んだ2選手を比べることに、あまり意味はないのかもしれない。プレースタイルがまったく違うからだ。ただ、個人的に驚きが大きかったのは、中学3年にしてJ1の屈強なDFと当たり前のように渡りあっていた森本の方だった。フィジカルに関しては、中学生離れした紛れもない「怪物」だった。

普段、あまり生で観戦する機会のない首都圏以外のチーム。9月23日のJ1第27節は、鳥栖を見るために浦和の本拠地、埼玉スタジアムに足を運んだ。守備崩壊の浦和は、6シーズン慣れ親しんだ3バックを捨て、前々節の柏レイソル戦から4バックを採用したという。そういう説明を友人から受けていたら、いきなりその守備ラインが崩壊した。

開始40秒あまり、浦和の森脇良太が攻め上がって空いた左サイドのスペースに、負傷が癒えて9試合ぶりに先発した鳥栖の小野裕二が縦パスを送る。その空白地帯に走り込んだ18歳のルーキー・田川亨介が、左足で見事なボレー。ハーフバウンドの浮き際を迷うことなく振り切ったシュートは、逆サイドネットを力強く揺るがした。

得点を許した浦和GK西川周作が「シュートに関しては相手の素晴らしさが出た」と表現した、パーフェクトなコースとスピード。チャンスが来ることは、事前にわかっていた。

「監督の指示で、あのこのスペースは必ず空いてくるというのはいわれていたので」

アドバイス通り、田川は裏への飛び出しを愚直に繰り返した。そして、その作業は先制点の場面に続き、2点目でも再び実を結んだ。

1-1の同点にされた後半35分。鳥栖のGK権田修一がパントキックの動作に入った瞬間、「ゴン(権田)さんがあそこは見ていてくれるので、走りだせば必ずボールが出てくる」と最終ラインの背後を狙う。結果的に権田のロングフィードは、浦和MF矢島慎也のミスを誘う。バックパス気味のヘディングが背後に流れたのだ。それを予測していたかのように、フリーで拾った田川がループ気味のシュート。飛び出してきたGK西川の頭上を越え、ゴールに転がり込んだ。

下部組織出身の田川は左足とスピードを武器にして、プロ契約を勝ち取った。その意識が大きく変わったのは5月に韓国で開催されたU―20(20歳以下)ワールドカップ(W杯)だったという。田川は第3戦のイタリア戦に先発。そして、0―1で敗れた決勝トーナメント1回戦のベネズエラ戦でも延長後半7分から交代出場した。2試合で「世界」を経験したものの、心に強く残ったのは“やり残した感”だった。「全てにおいて差を感じた」田川はチームに戻ると、「より一層サッカーに打ち込むようになった」と話す。

プロ1年目。ある意味で怖いもの知らずだ。そして、監督の指示さえ守っていればいい。この日もフィッカデンティ監督の意に沿ったプレーを続けたことで、浦和を相手に2得点を奪うことができた。新加入のマウリシオを除き、4バックのうち3人が日本代表経験者。その守備網を突き破ったことは自信になったはずだ。しかし、難しいのはここからだ。田川がさらにステップアップするには、指示されるだけではなく、いかに自分の意思をプレーに反映させていくかにかかってくる。そして、東京五輪世代となるこの新しい才能が順調に育っていくことを多くの人が願っているはずだ。

試合は結果的に、2―2の引き分け。田川の2得点は勝利に結びつかなかった。しかし、シュートが2度ポストを直撃するなど内容は鳥栖のものだった。一方の浦和はひどいものだった。そもそも、18歳のルーキーに「相手の背後は隙だらけというのはチームの共通認識」といわれてしまう浦和の守備意識はどうなっているのだろうか。メンバー表のDFの人数は4人に増えたが、森脇、槙野智章の両サイドバックは上がりっ放し。実質的に2バックの状態では、守り切れるものではない。

最後に、このごろとても気になっていることを一つだけ。帰宅して録画していたスポーツニュースを見ていると、田川のシュートの場面を「ダイレクト・ボレー」と解説していたのだ。ボレー(Volley)とは、そもそも空中に浮いている球をたたくプレーなのだから、ダイレクト以外あり得ない。もしダイレクト・ボレーという言葉があるのなら、バレーボール(Volleyball)は東京五輪を前に、競技名を「ダイレクト・バレーボール」と変更しなければいけない。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続。






アラーキーの幸福写真
乃木坂/ギャルママ(下)

    スタジオでの撮影が続く。17歳で長男を出産した大工原里美さんは、3人の子どもとカメラ…