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『末ながく、お幸せに』あさのあつこ著 晴れの日に明かされる新婦の様々な顔

2017年09月22日


友人、同僚、そして家族。結婚式の出席者たちはみな新郎新婦を祝福するためにそこに来ている。

しかし二人との関係や距離感は人によって違うし、それぞれが抱える事情も様々。本来であれば「まあ今日はお祝いの席ですから」という祝福の“大義”によって脇に置かれるべき彼らの感情、なかったことにされるはずの思いに焦点を当てた連作小説である。

第一章では新婦の高校時代の親友が登場。現在はデザイナーで新婦のためにウェディングドレスを作った人物だ。スピーチのトップバッターに立った彼女は、二人が卒業以来8年振りにバッタリ再会した日のことから語り出す。

<あの雨の日、わたし、かなりへこんでた。落ち込んで、落ち込んで、身体も心もずぶ濡れだった。本気で死にたいって……>

スピーチは自分を語る場ではない。ましてや「死」などという言葉は使うべきではない。それは彼女にも分かっている。しかし心からお祝いを贈るためには、どうしても避けることのできない話があった。

<わたし、あなたが羨ましかったの>

親友が語る新婦のエピソードからは、大人しくて控えめな女の子が浮かび上がる。そして第二章の語り部、乾杯の音頭をとった元上司の回想からは芯が強くて野心的な女性像が。さらには従兄弟の思い出話からは……。

一つ断っておくと、新婦は実はとんでもない悪女だったとか、過去に大きな罪を犯していたとか、そんな陳腐な話にはならない。面白く読ませるためのミステリーはきちんと用意されているが、それはあくまで一つの伏線。この一風変わった晴れの日の物語をいっそう味わい深くしてくれる仕掛けにすぎない。

決して順風満帆とは言えない人生を歩んできた一人の女。過去の様々な自分を知る人々を一堂に集めたのは、花嫁姿を見てほしかったからだけではない。過ぎし日に横たわっていたままだった悲しみや怒り、そして恨みを相手とともに受け入れて昇華させ、前へ進む力に変えていくため。その決然とした思いに胸を打たれる。

(小学館 1200円+税)=日野淳


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