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うそで読者を楽しませたい フェイクニュースと違う動機

2017年09月21日

「虚構新聞」のウェブサイト(画像の一部を加工しています)
「虚構新聞」のウェブサイト(画像の一部を加工しています)

うそのニュースを掲載するインターネット上の“新聞社”がある。円周率が割り切れる、紫式部の「裏日記」を発見―。「うっそだー!」と分かっていながらも、ちょっと信じそうになってしまう。皮肉まじりで、くすりと笑える。そんなうそのオンパレード「虚構新聞」を、私はもう何年も愛読している。

虚構新聞は、運営者で「社主」を名乗る男性、UKさんが、その名の通り“虚構”のニュースを新聞記事のスタイルで掲載しているサイト。実際にあったニュースを元ネタにした創作など、あり得ないだろうけど、何となくありそうな絶妙な具合のうそニュースばかりだ。

初めてUKさんにインタビューしたのは2013年。「ネット新党『白票』、今日にも立ち上げ」という見出しの記事など、政治を皮肉ったものに目がいき、まるで風刺画の新聞記事版のように思えた。何か主張したいことがあるのだろうか―。運営の理由を尋ねたくなり、話をうかがった。

返ってきた答えは「楽しんで読んでもらう」ことが狙い。「うそ」というと、一般にはネガティブなイメージ。うそをつくのは悪いことだと幼いときから教わる。そんなうそを良いものにする、それが印象的だった。

私が「フェイクニュース」という言葉を知ったのは、米国大統領が手ぶりを加えながら話すシーンの映像を見たときだ。以来、その言葉を本当によく耳にするようになった。米国などでは真実と思わせるようなフェイクニュースが飛び交い、社会問題になるほど深刻な事態を引き起こしている。

「虚構新聞」は、そうしたフェイクニュースとは性質が違うと思った。とはいえ、うそはうそだ。楽しんでもらうために書いているというUKさんのことがよぎった。社会を混乱させるフェイクニュースがはびこる現状を、彼はどうみているのか、再び気になった。

問い掛けてみると、「広い意味で、うそを書いてるじゃないかと言われると区別のつけようがないんですけど」とぽつり。だが、今問題になっているものと虚構新聞は違うとの認識だという。虚構新聞が読んで笑ってもらうことが主眼なのに対し、問題となっているフェイクニュースは、特定の主義や主張を持つ層に向けて捏造した内容などで広告収入を得るビジネスになっている点が特徴だとみているそうだ。

執筆は、UKさんにとって趣味だ。虚構新聞のサイトにも広告はあるが、収入の主ではない。記事には偽物だと読み手に気づいてもらえるよう、架空の名称を入れるなど、自分なりに仕掛けも作っているつもりだ。

それでも過去には、真実と誤解されて混乱を招いたこともある。例えば、ツイッターを多用していた当時の橋下徹大阪市長が市内の小中学生を対象にツイッター利用の義務化に乗り出すという記事。見出しにも内容にも、気付きは入れたつもりだったが、サイトは炎上。そういう経験を経て「どこまでが世間的に許されるラインか、すごく慎重になった」という。

海外では、フェイクニュース対策として「ファクトチェック(事実関係の点検)」といった取り組みが進み、日本でもそうした動きがある。フェイクニュースの台頭は、社会的な危機だ。

虚構新聞はそうしたものとは違うというネット上での反応もあるから、続けられるとUKさんは言う。自身にとってフェイクニュースは「数ある“文体芸”の一つ。パロディーの一つの形態」。面白いと言われるのがうれしい、との思いがひしひしと伝わってくる。

UKさんは、これからも執筆を続けていくつもりだという。ただ、「世の中の流れとして、書き手の意図がなんであれ、うそを流すことは絶対許されないって風潮になったら、もう厳しいかなと思うんです」。(共同通信文化部記者・萩原里香)


はぎわら・りか 放送担当。通販番組が大好きです。






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