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女性が少ない指揮者の世界 多くの人が織りなす音楽の神秘

2017年09月07日

指揮者の三ツ橋敬子さん
指揮者の三ツ橋敬子さん

音楽の世界では今も指揮者の女性が少ない。それは世界中で共通する問題らしく、昨年夏からクラシック音楽の担当になった私は、最初はとても驚いた。

だからといって女性を増やすべきだということではない。音楽に性別や国籍、出自は関係ない。音楽性が何より大事なのは言うまでもない。だからこそ、なぜ少ないのか、当該の指揮者の女性たちはその現状に何を思って、どんな思いで指揮をしているのか、とても気になった。

そこで今更のようだが、国内外で活躍する指揮者の女性たち4人にインタビューし、連載記事を書く企画を立てた。

結局のところ理由は分からなかったが、気鋭の若手、三ツ橋敬子さんやウィーン国立歌劇場などで活躍中のイタリア出身のスペランツァ・スカップッチさんは、見本となる先輩に女性が少なかったことを挙げ、幼い頃は女性の仕事とは思わなかったと話した。またNHK交響楽団首席指揮者のアシスタントを務める田中祐子さんは、歴史的に女性の作曲家が少なかったことから、必然的に楽団員も指揮者も男性が多くなったのではないかと推測した。

女性が指揮する難しさ、自分が男性であったらと思ったことは?との質問に、全員が「全くない」といい、田中さんは「注目され、むしろ得している」と話した。

4人が男性社会の音楽業界で生きる数少ない女性として、何の葛藤もなく歩んできたわけではない。指揮者の女性の草分け的存在である松尾葉子さんは、ある有名なコンクールに優勝し、あるオーケストラから「賞をとったから認めないといけないよね」と言われたと話していたし、他の3人も、公演で履いた靴のヒールの高さを評論家から指摘されたり、「女性のバイオリン奏者は女性バイオリニストなどと呼ばれないのに、指揮者だけは女性指揮者と呼ばれたりする」などと、多かれ少なかれ女性だから直面する体験に戸惑いを示していた。

ただ、こうした環境の中でも指揮をする原動力になっているのが、人と一緒に音楽をすることが好きだということだと、4人が共通して挙げていたのをとても興味深く感じた。

自分で読み解いた曲の解釈を人に伝え、コミュニケーションをとりながら、最終的には大勢をコントロールし表現する。コミュニケーションそのものが最終的な音楽の形となる、この仕事のデリケートなことと言ったら! 音楽家が音楽をすることは当たり前のことかもしれないが、その中身は、私の想像以上に人とのコミュニケーションが求められる部分が大きく、芸術家の天真らんまんなイメージとはかなり違っていた。そこにジェンダーの壁が立ちはだかりそうなものだが、4人とも、そんな労苦が多そうな共同作業を指揮者の魅力として挙げていた。

「自分の想像を超える音が広がったときは本当に楽しい」(三ツ橋さん)。「一つの言葉や行動が大きな影響を及ぼす。デリケートなものの積み重ねが大きなうねりになっていく。徐々に奏者の心が開いていく瞬間が面白い」(田中さん)。

自分の職業の魅力を語る彼女たちの口からは、音楽の不思議さが伝わってくるような、こちらをわくわくさせる言葉がどんどん出てきて、さまざまな葛藤も超え音楽が好きという純粋な気持ちが伝わってきた。

なぜ指揮者の女性が少ないのか、その疑問から出発した連載だったが、強く印象に残ったのは、多くの人が織りなす音楽の神秘に向き合うことの素晴らしさ、そして奏でられる音楽は、さまざまな人の感情が混ざり合ったものだということだった。(共同通信文化部記者・酒井由起子)


さかい・ゆきこ 2005年入社、16年8月からクラシック音楽の担当に。今は人生の中で最も音楽ざんまいな日々を送っている。






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