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豊田社長の“負け嫌い”に火がついた トヨタ、今年もルマン24時間に勝てず

2017年06月21日

決勝レース終了直後に笑顔で言葉を交わすトヨタの豊田章男社長(左)とポルシェ監査役会の会長を務めるウォルフガング・ポルシェ博士=ルマン(撮影・田口浩次)
決勝レース終了直後に笑顔で言葉を交わすトヨタの豊田章男社長(左)とポルシェ監査役会の会長を務めるウォルフガング・ポルシェ博士=ルマン(撮影・田口浩次)

「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」

江戸時代の平戸藩主で剣豪としても知られた松浦静山の言葉で、ヤクルトや阪神などを率いた名将・野村克也氏が好んで使っていることで有名な名言だ。18日にゴールしたフランス伝統の自動車耐久レース、第85回ルマン24時間で総合優勝争いを繰り広げたポルシェとトヨタ、それぞれのチーム関係者がこの言葉の意味をかみしめたかもしれない。

今年、トヨタはフル参戦している世界耐久選手権(WEC)の第1戦シルバーストーン(イギリス)と第2戦スパ・フランコルシャン(ベルギー)で連勝。そして、WECの第3戦として行われるルマンでもその好調を維持していた。3台体制で挑んだトヨタは、予選2日目に7号車の小林可夢偉がコースレコードを2秒以上縮める1分14秒791でポールポジションを獲得。8号車も2番手に続き、フロントローを独占した。17日午後3時の決勝スタート後も順調にトヨタはトップを守り、誰もが悲願の初優勝を疑わなかったが……。栄冠を獲得したのは、3年連続でポルシェだった。

レース序盤でポルシェの2号車、そして、トヨタの8号車、7号車、9号車が次々とマシントラブルなどでリタイアしたり、順位を落としたりした。唯一、ノートラブルだったポルシェの1号車もゴールまで4時間を切った18日午前11時過ぎにトラブルが発生しリタイアしてしまった。

大波乱となったレースは何と、一時は総合56位にまで落ちていたポルシェの2号車が総合優勝を果たす結果に。まさに「不思議な勝ちあり」だ。一方、決勝まではあれほど好調だったトヨタは予想していなかった車両トラブルや他車との接触に見舞われて、今年も優勝を逃してしまった。それをチームの準備不足といわれてしまえばそれまでだが、やはり「不思議な負けなし」だったと言える。

もう一つ、今回のルマンではドラマがあった。それが、トヨタ自動車の豊田章雄社長と、ポルシェの創業家一族で同社監査役会の会長を務めるウォルフガング・ポルシェ博士の再会だ。実は昨年のルマン終了後、ポルシェ博士から豊田社長に手紙が届いた。豊田社長も手紙を返し、その年の秋に開かれたパリモーターショーで直接会い、今年のルマンでの再会を約束した。レースチェッカー直後、ポルシェ博士は約束通りトヨタのガレージまで出向き、その後2人は再会した。

開口一番、ポルシェ博士は「ビッグファイト(大勝負)、グレートレースだったね」と声をかけ、豊田社長は「早々にレースを終えてしまい申し訳ない」と返すと、「いやいや、われわれも運が良かっただけだ。素晴らしい戦いだった」とポルシェ博士はトヨタチームをたたえた。そして最後に2人は来年の再会を約束し、固い握手を交わした。

豊田社長は常々「私は“負け嫌い”です」と語っている。首位で走りながらもゴールまで残りわずか3分でリタイアした昨年に引き続く、今年の結果を受けて、その“負け嫌い”に火がついたはずだ。勝負は来年、そしてさらに続くその先を見据えているに違いない。(モータージャーナリスト・田口浩次)