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『渋カジが、わたしを作った。 団塊ジュニア&渋谷発 ストリート・ファッションの歴史と変遷』増田海治郎著 立ち上がれ! 渋カジおじさん

2017年05月05日


そうそう、僕も。とタイトルを一目見て声を上げそうになる。

そして中学、高校の頃、ベッドに寝転んで、ファッション雑誌をボロボロになるまで捲っていた日のことを思い出した。

ベルボトムジーンズ、ライダースジャケット、紺ブレ、インディアンジュエリー……。ネットショッピングなんて想像もできなかったあの頃、東北の港町に住んでいた私の近くに、雑誌に出ているアイテムを買える場所はなかった。買えないということが欲望を増幅させ、毎晩のようにそれらを着ている自分を想像した。長い休みに入ると前半のほとんどをわかめ工場でのアルバイトに費やし、後半は全財産を握りしめて上京。渋谷と原宿のお店を強面の店員に怯えながらぐるぐる巡った。

なんて個人的な昔話を始めたらキリがないが、じゃあ私にとって「渋カジ」が過去のものなのかと言ったら、そうではなかったりする。好きが嵩じてファッションジャーナリストになった著者ほどではないにせよ、昨日の自分の格好を思い出してみると、上から下までメイドインUSA。つまり私は「渋カジ」おじさんになってしまったのだ。

本書によると「渋カジ」にも変遷や流れがあって、私が多大なるインパクトを受けた時期は、紺ブレに代表される「キレカジ」と、バイカーズスタイルを模した「ハードアメカジ」に分岐したあたりのようだ。このあたりの「渋カジ」ヒストリーがまとめて語られている本は、今までほとんどなかったように思う。現在40代前後の洋服好きの人にとっては、ここしばらく耳にしていなかった固有名詞を懐かしがりながら楽しく読める本だ。

そして特筆すべきは、ファッションの本としてはいささか異質な主張が展開されるあとがきパート。そこには「渋カジ」世代(つまり団塊ジュニア世代)は「七転び八起き世代」だとある。受験戦争を切り抜けても、待っていたのはバブル崩壊と就職氷河期。一生懸命働いたものの終身雇用の時代は終わり、リストラの嵐がやってきた。「失われた20年」の間で「戦後の歪み」の影響をモロに受けてきた自分たちには、この歪みを矯正する使命があると著者は説いている。むしろこれを言いたいがために本書を書いたのではないかという程の力強さで。

「渋カジ」おじさんの真価が問われるのはこれからだ。

(講談社・1600円+税)=日野淳


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