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『日本ノンフィクション史』武田徹著 物語るジャーナリズム生成の軌跡

2017年04月28日


今や自明の存在である「ノンフィクション」というジャンル。その歴史は意外と浅いことに驚いた。日本におけるノンフィクション生成の軌跡を精緻な分析とソリッドな文体でつづっている。

戦争や革命の現場で起きた出来事を物語る報道レポートが「ルポルタージュ」と呼ばれ、日本では石川達三や林芙美子らによる中国戦線の従軍報告がその嚆矢となった。戦後は革新勢力による社会派ルポルタージュから、大衆の関心に訴える週刊誌ジャーナリズムへ。『世界ノンフィクション全集』が編まれた1960年代にノンフィクションという概念が成立し、70年代に沢木耕太郎の登場によってジャンルとして確立する。

それは経済成長や科学技術によって人々の生き方や価値観が多様化し、人間の想像力を超える現実が生起する時代と重なる。事実をもって社会の実相を語らしめる表現形式は時代の要請であり、それに応えたのが「物語るジャーナリズム」とも呼べるノンフィクションだった。

さて、沢木や田中康夫、宮台真司、古市憲寿といった同時代の書き手が登場する70年代以降よりも、大宅壮一、梶山季之、草柳大蔵らが活躍する本書前半のほうが圧倒的に面白い。

おそらくそれは過去の人物の業績は事実と評価が定まっているぶん、より物語として成立しやすいからだ。とくに大宅の場合はミニ評伝の趣さえある。通史であり解説書である本書を読みながら、私たちはいつの間にかノンフィクションの面白みに触れることになる。

(中公新書 880円+税)=片岡義博


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