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『人工知能の核心』羽生善治 NHKスペシャル取材班著 天才棋士による知の冒険

2017年04月28日


テレビ番組の書籍化はちょっとズルいという感じがして敬遠していたが、偏見だった。羽生善治が人工知能の最前線をレポートしたNHKの特集番組(2016年5月放送)と比べると、取材の裏舞台まで記したこの書籍版は、はるかに彫りの深い内容になっている。

人工知能の最先端がわかりやすく解説されている。だがそれだけなら類書は山とある。本書の読みどころは、対局中の棋士と将棋ソフトの思考メカニズムを比べて、人工知能の特質や弱点、可能性を考察する羽生の洞察にある。たとえば――。

棋士が次の指し手を膨大な選択肢から絞っていく際、頼りとするのは「筋が悪い」「形が悪い」といった、経験で培った美意識だ。その美意識が人工知能にはない。それは人工知能に「恐怖心がない」ことに由来しているのではないか。人間の美意識は見慣れたものに感じる安全や安心感に基づいていると考えられるからだ。人間は一貫性や継続性のあるものを美しいと感じる。とすれば、美意識は時間の流れとも関わっている。詩や音楽や感情が時間と深く結びついていることを思えば、人工知能が創造性を発揮できるかどうかは、時間の概念を獲得できるかどうかにかかっている――。

その旺盛な好奇心と深い思索に目を見張る。羽生は常に自分の頭脳をリフレッシュするため、新たな知見や環境に触れるよう努めていると聞いたことがある。天才棋士は人工知能を自分の強さの糧にして、自らも不断に進化しようとしている。

(NHK出版新書 780円+税)=片岡義博


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