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希有なエンターテイナーと実感 聴衆の心つかんだ小澤征爾

2016年10月20日

ズービン・メータと一緒に指揮する小澤征爾(中央右)=サントリーホール提供
ズービン・メータと一緒に指揮する小澤征爾(中央右)=サントリーホール提供

8月からクラシック音楽の担当記者になり、指揮者の小澤征爾の公演を度々取材するようになった。初めてお目にかかったのは夏に長野県松本市で開かれた音楽祭「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」。そしてつい最近は、東京・サントリーホールの開館30周年を祝った10月初めのガラコンサート。この2カ月、集中して見て気付いたのは、天真らんまんな指揮者であり、ユーモアあふれるエンターテイナーということだ。

松本フェスの開催前は、4月に欧州公演で体調を崩し、曲目を変更して心配された。だがこの間、計4回公演を見てきて、小澤は公演を重ねるたびに力がみなぎってくると感じ、正直、数日でこんなに変わるものなのかと驚いた。

時折、指揮台の前に置いたいすに座るが、指先までの全身を使い、音の強さや柔らかさを繊細に表現してサイトウ・キネン・オーケストラのメンバーに伝える。

舞台に立つとどんどん研ぎ澄まされて生き生きし、鬼気迫るものさえ感じさせた。関係者の一人は「それが小澤のすごさなんですよ」と言っていた。

一方、公演終了後のアンコールでは柔和な笑顔を見せ、スタッフから渡された花束を掲げて左右に振ったり、共演者とおどけたり、一転おちゃめな一面を見せる。音楽に入り込んでいったときのすごみと、それが解かれたときの純真さに、聴衆の心をぐっとつかんでいると思った。

ガラコンサートでは名門ウィーン・フィルを指揮し、シューベルトの傑作、交響曲第7番「未完成」、武満徹の「ノスタルジア―アンドレイ・タルコフスキーの追憶に―」を端正につくり上げ、会場を引き締めた。

アンコールでは、この日、曲ごとに指揮を振り分けた世界的な指揮者のズービン・メータとわいわい仲良く出てきて、マエストロ2人がおしゃべりしながら一緒に指揮するという、何ともぜいたくなアドリブを披露した。

何が起こるのかとわくわくする聴衆を尻目に、メータと一緒に指揮台に直接腰を下ろしたり、おしゃべりしていた小澤。楽団員を見ていないふりをしながら、ここぞと言うときに正確に指示を飛ばすなど、さながらいたずらをする指揮者を演出。メンバーも演奏しながら立って応え、盛り上げた。

最後はメータと手品のように宙に向かって一振りすると、ホールの天井から、金色のテープが無数に落ちてくるサプライズ演出があり、大きな歓声が上がった。

音楽を聴かせて楽しませるだけではなく、聴衆とその時間を共有し、雰囲気をつくり上げる、希有なエンターテイナーなのだと実感した夜だった。(酒井由起子・共同通信記者)


さかい・ゆきこ 2005年入社、16年8月からクラシック音楽の担当に。今は人生の中で最も音楽ざんまいな日々を送っている。






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