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モータースポーツ
難しさを増すメディアとアスリートの関係 誰でも意見が発信できる時代が生んだ騒動

2016年10月19日

土曜日にチームホスピタリティで会見したハミルトン。自らの発言後に質問を受けることなく途中退席した=鈴鹿サーキット(撮影・田口浩次)
土曜日にチームホスピタリティで会見したハミルトン。自らの発言後に質問を受けることなく途中退席した=鈴鹿サーキット(撮影・田口浩次)

9日に決勝を行ったF1の日本グランプリ(GP)は、3年連続でポールポジションを獲得したニコ・ロズベルク(メルセデス)が制した。これで、年間王者を争うチームメートのルイス・ハミルトンに33ポイントのリードをつけ、2006年のデビュー以来11年目での初戴冠までいよいよ、となった。

しかし、日本GPで注目を集めたのは、そのロズベルクでも復帰2年目のホンダでもなかった。世界中が、ハミルトンとメディアとの“冷戦”に目を奪われたのだ。

日本GP開幕前日の6日、国際自動車連盟(FIA)の公式プレスカンファレンスに出席していたハミルトンが、自分のスマートフォンで他のドライバーの写真を撮影してアプリで加工後にアップした。それを記者に質問されると「ずっと同じことが続いているから、何か新しいことをしてみた」と答えたのだが、一部のメディアはそうした行為を断罪するような記事を世界に配信した。

すると、土曜日の予選後にチームが設けた会見の場で、ハミルトンは一方的に「僕はもう君たちの笑顔は見ることはない。この前は楽しんでいた。それが失礼と感じたなら、そんなつもりはなかった。でも、もっと失礼なことだったのは、その後に配信された記事だ。みなさん、この週末は楽しんで」と語ると、質問を受けることなく退席した。

そして、決勝の後もFIAが指定するテレビのインタビューなどは受けるものの、活字メディアからのインタビューはほとんど受けなくなった。今週開催のアメリカGPで、果たしてハミルトンとメディアがどのような距離感を持つのか、世界中のファンが注目している。

会員制交流サイト(SNS)が普及したことで、アスリートを含め誰もが自ら発信をすることが可能になった。ハミルトンのツイッターフォロワー数は約382万人。もはや、メディアと変わらない。チームメートのロズベルクは、インターネットの動画サイト「YouTube(ユーチューブ)」に自らのチャンネルを持っている。実際、アスリートのSNSなどを見て記者が質問をする姿も当たり前になりつつある。

しかし、SNSはあくまでも「自分」視点だ。一方、メディア側はその立ち位置によって、同じものを見てもその評価や記事はまるで違うものになる。どちらにも一長一短があるだけに、メディアとアスリートの関係の難しさを、今回のハミルトンの一件は浮き彫りにしたといえるだろう。(モータージャーナリスト・田口浩次)