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『驚きの介護民俗学』六車由実著 老人ホームで生まれた可能性

2012年04月30日


本書は民俗学と介護の両分野に新しい可能性を開く瞠目の書である。

前著『神、人を喰う』でサントリー学芸賞を受賞した民俗学者の著者は4年前、大学准教授の地位を捨て、郷里静岡の特別養護老人ホームで介護の職に就いた。食事やトイレの介助の合間に聞く老人たちの生い立ちは驚きと発見に満ちたものだった。

村々で蚕の雌雄・産地をえり分ける「鑑別嬢」。農家の副業でやった流しのバイオリン弾き。電線を引くために山村を渡り歩いた技術者は“高度成長期の漂泊民”ではないか。これまでの民俗学が目を向けなかった「忘れられた日本人」がここにいる! 猛然と聞き書きを始めた著者はやがて「介護民俗学」なる新分野を提唱する。

それは介護現場にも新たな収穫をもたらした。認知症の老人の昔語りをひたすら書きとめるうちに、意味不明だった言葉はかつての暮らしぶりとつながり、不可解な行動が意味を持ち始めた。介護「される側」だった老人が昔語りを「する側」に転じたとき、自信や能力が回復し、聞き書きを冊子化した個人史が家族との関係を編み直すこともあった。民俗学の働きかけが現場にもたらす変化は実に躍動的でスリリングだ。

聞き書きの時間を著者は「至福の時間」「幸せの日々」と表現している。驚きの連続は喜びの連続でもあった。著者がなぜ大学を辞めたのかは分からない。ただ、その人生と学問を前に押しすすめたのは介護現場だった。時代を生き抜いた老人たちの存在だった。

(医学書院 2000円+税)=片岡義博






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