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『シューマンの指』奥泉光著 独特の世界観、圧巻の結末

2010年08月23日


これは青春モノなのだろうか。読み進めるとミステリーのようでもあり、型にとらわれない前衛小説のようでもある。読後にこう納得した。そのどれでもあり、どのジャンルとして読んでも一級品だと。こんな小説は他にはない。

著者はミステリー風味を得意とする純文学系の小説家として知られている。今作では19世紀ドイツの作曲家シューマンに熱狂する高校生3人の青春ストーリーとして、まずはストーリーをひっぱる。譜面をめぐる議論、音大受験、同盟結成や雑誌作りの試み…。クラシック学徒の想像力たくましい思春期の日々は、それだけでも清々しく、エンタメとして成立している。

物語の中途、主人公はプールで女子高生の水死体と遭遇する。突然、推理要素が加味され、爽やかな青春物語に浸っていた僕は、意外な展開に面食らった。でも次第にミステリーとしても引きこまれる。独特の世界観はラストまで予断を許さず、圧巻の結末に呆然とさせられる。

友人で天才ピアニスト永嶺修人がシューマンと重ねられ、物語が重層化する。シューマンは練習のしすぎで指を痛めピアノが弾けなくなったり、精神のバランスを崩しやすく、投身自殺を図ったり…その人生は煩悶の連続だった人。永嶺修人の存在が異様なものに感じられ、謎めき、いつの間にかとらわれる。作者の、キャラクター造形の手腕にも感嘆した。

(講談社 1600円+税)=一色こうき


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