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『リア家の人々』橋本治著 戦後日本の父親の姿

2010年08月23日


タイトルのリアとは『リア王』から取られている。戦後、威厳ある父親という格式が壊れていく様子を、このシェークスピア悲劇を引用しながら物語っている。しかし、悲劇というほど劇的ではなく、むしろ敗戦を経験した日本の、どこにでもありそうな一家のストーリーとして描かれる。

主人公・文三は文部官僚。本人の予想に反し、戦後まもなく公職追放に遭う。家族に迷惑をかけ、本人も迷走をするが、なんとか復職する。苦労をかけた母親の死と、娘ふたりの去っていくような結婚。残った三女の恋愛と、自立への芽生え…。文三はいつも事態をただ目をつぶってやり過ごすのみ。

一家はいつも「戦争」や「学生運動」という荒波にもまれ、行く手を左右される。時に、物語をはみ出して饒舌に語られる時代背景は、著者・橋本治のユニークな解釈も手伝って真に迫ってくる。

人は価値観の変更を迫られる出来事に遭遇したとき、どんな方策を打つのだろうか? 小説の主人公・文三においては思慮のない追認のみにとどまる。でも、それは戦後の父親の典型的な姿で、ひいては今のいびつな日本を招いた原因である。と、著者は言いたいのかもしれない。

(新潮社 1600円+税)=一色こうき


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