2010年08月18日

2004年から所属したヤマハを去り、来季はドゥカティへ移籍するロッシ
2週間のわずかな夏休みを終えたモトGPは、第10戦チェコGPから戦いを再開した。同国第2の都市ブルノ郊外のブルノサーキットで行われた日曜日の決勝レースでは、YZR-M1を駆るホルヘ・ロレンソ(フィアット・ヤマハ)が独走優勝を遂げ、今季7勝目。2位のダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ)との差を77点に広げ、総合優勝に向けさらに大きく前進した。
しかし、今回のレースで話題の中心だったのは、優勝したロレンソよりもむしろ、チームメートのバレンティーノ・ロッシだ。今季でヤマハとの契約が節目を迎えるロッシは、開幕直後から「残留か、移籍か」とその去就に注目が集まり、各種メディアでも様々な憶測が乱れ飛んでいた。6月頃には、ドゥカティへの移籍が半ば公然の事実として関係者の間で囁かれるようにもなった。が、母国イタリアGPで転倒し、負傷。一時は本人不在のまま噂がひとり歩きする感もあったものの、驚異的な早さで復帰を果たした7月に、「チェコGPですべてを話す」と予告し、今回のレースに最大の注目が集まっていた。
耳の早い各国記者たちの間では「ヤマハがまず日曜夕刻に今季限りでの契約終了を発表し、続いてドゥカティが来年からの2年契約を発表する」という段取りまでもが噂されたが、決勝レース終了後の流れはまさにそのとおりの展開になった。
ヤマハから発表されたプレスリリースで、ロッシは以下のように述べている。
「新しい挑戦に向かうときが来た。ヤマハでの僕の仕事は終わった。残念ながら最も美しいラブストーリーは終わってしまったけれども、とても素敵なたくさんの思い出を残してくれた。たとえば、ウェルコム(ヤマハに移籍した最初のレース、南アフリカGPの開催地)で、M1と最初にキスをしたとき、彼女は僕の目をまっすぐ見て、こう言ってくれたんだ『愛してるわ!』って」
ロッシは、バイクをまるで恋人のように優しく愛を込めて扱う、と言われている。ヤマハとの別れを述べるこのセリフにも、イタリア人ならではの情熱が溢れている。このコメントで言及している2004年の開幕戦は、ロードレース史に残る劇的な一戦だった。当時最強と言われたホンダを去ったロッシは、移籍直後の第1戦目で、およそ勝利とはほど遠い陣容のヤマハに勝利をもたらし、アフリカ大陸最南端の地で歴史を塗り替えた。
あれから6年半。今回移籍するドゥカティは、当時のヤマハと違って毎年チャンピオン争いを繰り広げる実績を備えている。イタリア人選手にイタリアメーカーという「オールイタリアンパッケージ」が、はたしてどれほど図抜けたパフォーマンスを披露するのか。早くも来年の開幕戦に向け、世界中から大きな注目が集まっている。だが、ホンダ、ヤマハという日本メーカーの母国の国民としては、少し複雑な心境になるのも、また事実なのだ。(モータージャーナリスト・西村章)

