ヤン・イクチュンの監督デビュー作はアメリカン・ニューシネマ的な肌触り 『息もできない』
2010年03月16日

世の中になじめない男と少女の純愛映画といえば、真っ先に『タクシードライバー』が思い出される。本作も、借金の取り立てで生計を立てる中年ヤクザが、女子高生との交流を通して改心する話だ。
両作とも主人公は、年はとっているものの未成熟な魂を持て余し、社会が悪いんだ!と被害者面して生きてきた。それが自分と同じ傷ついた魂に触れることで、眠っていた純真さをよみがえらせる。だから対照的なラストだが、どちらにもカタルシスはある。どこかザラついた、アメリカン・ニューシネマ的な肌触りも似ている。
韓国の個性派俳優ヤン・イクチュンの監督デビュー作だ。自ら主演し、唐突で手加減のない暴力描写から、よく北野武と比較されるらしい。だが北野作品は、同じバイオレンスでも運動性が生む映画的高揚感が魅力。それに対して、本作はむしろ社会へのいらだちを表現したもので、際立つのは作り手のメッセージだ。その意味でも、『タクシードライバー』的と言えるだろう。★★★★☆(外山真也)
【データ】
監督・脚本・出演:ヤン・イクチュン
出演:キム・コッピ、イ・ファン
3月20日(土)から全国順次公開









