感涙! 母と娘、愛と葛藤の物語 『風と琴』 高草洋子著
2010年02月22日

昨年話題になったロングセラー『びんぼう神様さま』の著者の第2弾。挿絵も日本画を学んだ著者の手になる。
落涙してしまった。電車の中で。不覚…。これは、人の世の業ともいえる母と娘の愛情と葛藤を描きながら、生きることの輝きを謳った珠玉の小編。
上方の豪商の一人娘として生まれた紫乃は天女のごとく美しくて器量よし。だが幼いころから足が悪く、立つこともできなかった。母親は世間に見下されぬよう娘の教育に血眼となり、家柄を求めて名家の息子との縁談を進める。しかし、はやり病にかかった紫乃は盲目、あばた顔となって破談。母に仲を裂かれた使用人への思いを乗せて、心の限り琴を弾く。自分の過ちに気づいた母は、命をかけて百度詣でを始めるのだった-。
娘に対する母親の愛はねじれている。ねじれていても愛は愛だから娘は苦しむ。母と娘の間によどむわだかまりを抱えたまま生きる女性は、今の世にも少なくないだろう。
ねじれをほどくには、命の源から聞こえる声に耳を澄まして一心に思いをかけること。そのとき必ず奇跡は起こる、と物語は告げている。これは「昔々」のお話。そして優れたお話には人類普遍の宝が埋まっている。
(地湧社 1300円+税)=片岡義博
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