2010年02月11日
記者会見で熱弁を振るったスカパー!の田中晃専務(中央)とゲストの女優たち
先に言い訳しておくと、私は面白いことが起きそうな道を選んで生きるように努めている。バンクーバー五輪の時を迎え、1年半前のことを思い出した。
北京五輪閉幕から間もない2008年9月、スカパー!の「10月3日、アダルト番組のハイビジョンチャンネルも開局します」という記者会見に足を運んでしまった。正直に言うと、私の所属する報道機関としては、行かなくても大丈夫な会見だ。ゲストが明日花キララや蒼井そらといった人気女優6人だが、別にすごい格好で出てくるわけでもない。でも「まじめ記者会見×アダルト」なんて機会はなかなかなくて、面白いかもしれないから見たい。ありがたいことに、スカパー!女性社員から「記事にならなくてもいいから、ぜひ来て」と熱いお誘い。「あ、そうなの。そこまで言われちゃあ行くしかないか」。面倒くさそうなフリをして向かってみた。
会場は東京都渋谷区円山町のクラブ。後に酒井法子の夫が覚せい剤所持の現行犯で逮捕される現場にほど近いエリアだ。有名なホテル街の路地をてくてく、ようやくたどり着くと「あら~宮崎さん、“まさか”本当に来てくださるなんて」と女性社員の大きな声。呼ぶな呼ぶな、真っ昼間のホテル街で私の名を。それに、あんなに熱く誘っておいて「まさか来るとは」はないじゃないか。来ちゃった自分が恥ずかしい…。
2階まで吹き抜けの天井でミラーボールが回るホールに入るとすぐ、アダルト番組を流しているモニター2台が目に飛び込んできた。おっと、これはどんな顔をして見るのが正しいのでしょうか。真剣な顔はウソくさいな、かといって無邪気な笑顔でってのも無理な話だ。来場者はたくさんいるのに、それぞれが、今この時を共有している事実を若干拒否しているような微妙な空気…。
そんな空気はお構いなしに、スカパー!女性社員が寄ってきて「そっちは従来のアダルトです。こっちはハイビジョン制作でモザイクもきれいで、10mぐらい離れて見ると…」とビックカメラの店員よりもさわやかに説明する。「ね、きれいでしょ、宮崎さん」「あ、そ、そうね。なるほどね~」って会話しづらいわ。つい目を細めて見入りそうになって、踏みとどまった。
記者会見開始。「スポーツ以上にハイビジョンに向いているのは人間の肌なんです!」。日本テレビでスポーツの大イベントを多く手掛けた後、スカパー!に移った田中晃専務が熱弁を振るった。カルロス・ゴーンみたいな大まじめな顔で。反則だ。「ハイビジョンによる圧倒的な臨場感。北京五輪を超える肉体の躍動感!」。私は下を向き、笑い声こそこらえたが、肩の震えまでは抑えきれなかった。見事な攻撃だ、田中専務。
続いて照明が落とされ「注目作品ラインアップ!」の上映。恐らく、わが人生最初で最後の「集団アダルト鑑賞」の始まりだ。暗闇に大型モニターが浮かび上がり、作品中の女優の声が大音量で響き渡る。キョロキョロしてみると、報道陣・関係者合わせて数十人、一同まっすぐモニターを向き、なぜか微動だにしない。イースター島で上映しているみたいだ。
やめろ。やめてくれ。私は笑いをこらえて身もだえ、渋谷区円山町にて瀕死。
失礼しました。頑張れ、ニッポン。(敬称略)
(宮崎晃の「瀕死の私にエンタメを」=共同通信記者)









