障害を超え、いかに世界とつながるか 『リハビリの夜』 熊谷晋一郎著
2010年01月25日

『リハビリの夜』 著者は1977年生まれの小児科医。仮借ない自己分析と自己開示。その覚悟は痛切ですらある。
すごい本に出合ったと思った。脳性まひの著者は物心つく以前から18歳まで毎日リハビリを続けた。お手本たる「健常な動き」をなぞれない身体が、いかに「私の体に合った動き」を手に入れ、世界と融和していくか。その格闘のプロセスが自他の身体感覚と生理に分け入り開示される。
リハビリの「監視し監視される関係」の中で身体はこわばるばかり。リハビリに失敗し、一人暮らしを始めた著者は、一人でトイレに行けず失禁。トイレを改造し、自分の動きを組み直す。外出先で便意との交渉に失敗し失禁。後始末をお願いするため不特定多数の介助者とのかかわり方を模索する。
挫折の度にそれまでの関係をほどき、人やモノとの新たなつながり方を探る。官能さえ伴う他者との自由な相互交渉の中で「私の動き」が立ち上がる。
自分の意のままにならぬ身体や他人、社会とどう折り合っていくか。それは障害者ならずとも、私たち一人ひとりが生きるうえでそれぞれに突き当たる問いだろう。著者は全身を投げ出してそれに答えようとしている。
(医学書院 2000円+税)=片岡義博
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