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水面下の移籍交渉 オートバイの世界選手権

2010年01月06日

ファンに気さくにサインするペドロサ
ファンに気さくにサインするペドロサ

昨年はホンダにとってオートバイの世界選手権シリーズに参戦して50周年という節目の年だった。ワークスチームのレプソル・ホンダは最高峰のモトGPクラスで王座奪回に挑んだが、エースのダニ・ペドロサ(スペイン)は年間総合成績で3位。ただ、シーズン終盤は信頼性の高いエンジンが威力を発揮。最終戦のバレンシア・グランプリ(GP)では、ペドロサが後続を一気に引き離す走りで圧勝し、1年を締めくくった。

ホンダとペドロサの結び付きは強く、開幕当初にHRC(ホンダ・レーシング・コーポレーション)の中本修平副社長が「ダニがチャンピオンを取れなかったら、責任はマシンを開発するホンダの側にある」と明言するほど。だが、両者の間では微妙な力関係の綱引きが行われているようだ。

ペドロサは昨秋のチームとの契約更改で、通常の2年ではなく、単年で残留する道を選んだ。「緊張感を保つために1年契約を希望する。その結果次第で次の契約を判断してほしい」と迫ったという。しかし、この選択には別の思惑も見え隠れする。ヤマハのバレンティーノ・ロッシ(イタリア)とホルヘ・ロレンソ(スペイン)、ドゥカティのケーシー・ストーナー(オーストラリア)が今季そろって契約更改の時期を迎えるからだ。

4選手は、どのチームものどから手が出るほどほしい実力者。ペドロサの単年契約は、ロッシらの動向を視野に入れながら自由に他チームと交渉できる選択肢を確保しておく、という目論見も大きいようだ。

ただ、ホンダとの関係を15年以上も続けているレプソルYPF社は、石油・ガスを扱う多国籍企業で、スペインに本社がある。こちらも今季でスポンサー契約が終了するが、同社はスペイン出身選手の王座獲得を以前から熱望している。ペドロサの成績や去就、さらには今後の景気動向次第では、ホンダとの契約関係が微妙になる可能性もある。

さまざまな綱引きが一気に顕在化することを見越したのか、ホンダは今季、ドゥカティで監督を務めたリビオ・スッポ(イタリア)を引き抜いた。新たな役職はマーケティングディレクターで、スポンサーとの交渉が主な職務であることは明らかだが、「2011年以降にチームの陣頭指揮を執るのではないか」と指摘する声もある。

その場合、ドゥカティでともに戦ったストーナーの去就も無関係ではなくなりそうだ。ロッシは地元イタリアのドゥカティ入りもささやかれており、さまざまな情報が入り乱れながら、有力ライダー獲得に向けた動きは水面下で始まっている。今季が開幕すれば、王者争いと同等かそれ以上に、彼らの移籍話が大きな話題になるだろう。(モータージャーナリスト・西村章)