2009年12月17日

還暦ライブは大盛況。ギターを抱えて歌う豊田勇造=京都市円山公園音楽堂
ロックやフォーク、ブルースが好きで、1960年代のカウンターカルチャーにしびれた経験のある方なら、豊田勇造というシンガー・ソングライターの名前をご存じだろう。
団塊の世代、ホームタウンは京都。同志社大学時代に「ベ平連」にかかわりながら本格的に歌い始めた。76年には傑作アルバム『さあ、もういっぺん』をリリース。以来、大手音楽業界とは無縁に、日本を、世界を旅しながら、コンサートとレコーディングを重ねてきた。
その豊田勇造が、とうとう(ついに?)60歳を迎え、その記念にと6月6日に京都で『60歳6時間60曲フリーコンサート』を敢行。その模様を記録した2枚組CD『円山音楽堂ライブ!』が、ビレッジプレスから発売された。
この稿を書いている私が、京都のライブハウス「磔磔」や「拾得」をうろついていたのは大学生だった70年代後半で、豊田勇造は既にそのころ、深い声とうなるギター、詩的感受性に満ちたメッセージソングで、関西フォーク界でも抜きんでた力量をうたわれていた。初期の『大文字』『行方不知』などは、いまなお、メジャー発のフォークソング群では聴けない名曲と断言していい。
さて、今回のライブアルバム。自伝的要素の強い『海の始まり』をフィーチャーしつつ、40年に及ぶキャリアを網羅した19曲を収録。和やかな会場の応援を得て、コクのある演奏を披露している。そして同時に、60歳になった歌声には、かすかな老いの気配が忍び込んでいる。だが、それは悲しいことではない。
誰もに訪れる老いを、どう受け入れ、そこから何を表現していくのか? かつて「30歳以上を信じるな」と叫んだ世代が直面している問題に、豊田勇造は気負いもてらいもなく、ユーモアさえ漂う独自のスタンスで立ち向かっているからだ。それはまるで、ボブ・ディランが『タイム・アウト・オブ・マインド』で、あるいはニール・ヤングが『プレーリー・ウィンド』で刻んだ道程を思わせる。
アルバム収録のある曲が、このことを雄弁に物語っている。曲名は『老いてこそロック』。ご一聴あれ。(細田正和・共同通信文化部記者)
(注)CDは税込み3300円。ビレッジプレス(03-3928-7699)、または豊田勇造公式ホームページ
(http://www.toyodayuzo.net)のSHOPコーナーから。
ほそだ・まさかず 1982年共同通信入社。三重や名古屋で警察・裁判などを担当し、90年から文化部記者。50歳を超えたが、たまにネクタイを締めると後輩が「七五三か」と笑う。人生の糧は、ロックと探偵小説と映画。近著に『明日がわかるキーワード年表』。









