2009年09月17日

「演劇集団 円」2009年5月公演『初夜と蓮根』の舞台=東京都台東区西浅草のステージ円
私が住んでいる浅草の、雷門のにぎわいから少し外れたところに日本を代表する劇団のひとつ「演劇集団 円」がある。文学座の流れをくみ、芥川比呂志さん、岸田今日子さんら演劇界の重鎮が活躍してきた。今は名優、橋爪功さんが総勢200人近いメンバーを率いている。ところが「演芸」と笑いの街で本格派の演劇が苦戦している。
円の存在は浅草であまり、というかほとんど知られていない。10月には「孤独と暴力に満ちた荒唐無稽なダーク・コメディー」と銘打ってマーティン・マクドナー作の翻訳劇『コネマラの骸骨』が、劇団に併設されたステージ円で上演されるけれど、浅草の街では公演のポスターを見ることさえない。「したまちコメディ映画祭in台東」(9月下旬)とか、劇団唐ゼミ☆の『下谷万年町物語』(10月)のにぎやかで勢いがあるポスターがあふれているのに比べると、悲しいくらいだ。
円が浅草に引っ越してきて何年もたつというのに、どうしてだろう。メンバーが地元に住んでいない-というのが、大きいんじゃないかと私は思っている。橋爪さんは山の手に住み、公演や稽古には定期券を使って通ってくる。そのほかの皆さんも「通勤派」。浅草に住んでいるのは、たった2人らしい。この街では飲み屋で隣になった人が日本舞踊の踊り手だったりして「それなら一度、舞台を拝見しましょう」なんてことがよくある。人と人とのつながりを大事にする土地柄なのに、円にはそれがない。「由緒正しいかもしれないけど、なんだかねえ」っていう声が聞こえてくるようだ。円が根付くかどうかも、街の人とのお付き合いの仕方にかかっていると思う。
劇団だろうとプロ野球やサッカーのチームだろうと本拠地の盛り上がりがあってこそ、元気が出て活気づく。例えば、若い役者の合宿所が近所にあって、アルバイト先も浅草だったらどうだろう。スターになるかもしれない若者を応援しようという人もいるだろう。演目にしても、スタイリッシュなものはさておき、分かりやすい演目を上演したらどうか。円には子供向けのレパートリーにアニメ映画にもなった「あらしのよるに」があるが、この宝物のような作品を地元の子どもたちに見てもらうのもいい。浅草を舞台にした新作が出来るとしたら、それが一番の方法だと思う。(共同通信記者・根本美代子)
ねもと・みよこ 浅草の観音様の裏に住んで15年。ニッポンの伝統行事を日常に楽しみつつ、長いお休みは海外でクラシックをまとめ聴き。インターネットで世界中のチケットが手に入る、よい時代になりました。









