2009年09月10日
「第二回落語大秘演會 笑福亭鶴瓶 JAPAN TOUR 2009―2010 WHITE」のポスター
ディア・ツルベ、私は9月8日、「第二回落語大秘演會 笑福亭鶴瓶 JAPAN TOUR 2009―2010 WHITE」第2夜を、東京・浅草公会堂に見に行った。するとあなたは、全国各地を旅するNHKの人気番組「鶴瓶の家族に乾杯」の裏話を披露し、旅先で知り合った人々といつも「何かあったら電話してきいや」と携帯電話の番号を教え合っていると言うからたまげた。それじゃまるで、村でただ1人の医者みたいじゃないか。
「だから僕の携帯は(電話番号の登録件数の多さで)パンパンなんです。吉永小百合さんから能登半島のおっちゃんまで、ごちゃまぜで」とあなたは笑った。なんという人だ。
約30年前、あなたが巨大なカール頭で司会していたテレビ番組「突然ガバチョ!」のころから、私はずっと笑わされてきた。深夜ラジオ番組「鶴瓶・新野のぬかるみの世界」も聴いたし、「鶴瓶上岡パペポTV」、最近ならゲストの俳優と即興劇に挑む「鶴瓶のスジナシ!」、アドリブ漫才の「鶴の間」などなど。その柔軟さ、引き出しの多さ、顔、無尽蔵なおもしろ実話の数々。
「家族に乾杯」にいたっては、市井の人々と出会った瞬間から旧知のごとく話し、話される奇跡。相手が誰であろうが瞬時に“武装解除”させてしまう威圧感抜きのオーラにはブルーヘルメット(国連平和維持活動の象徴のあれです)も真っ青でカブトを脱ぐというもの。
しかし、私は各番組を見終わるといつも、あなたが独り善がりではなく、共演者や一般の人々をきっちり引き立てていることに気づき、そのたびゾッとしてきた。あれは自然体? 習練の積み重ねが「反射」の域に達した? それともあなたは本当は、細~い目の奥が冷たく鈍く光り、緻密(ちみつ)な計算を働かせているロボツルベ?
あの“24時間お笑い怪獣”といわれる明石家さんまでさえ、みんなのイメージの中にある「果てしなく陽性なさんちゃん」とは違う面を持っているのでしょう、恐らく。だって私は6月、EXILEの番組「EXH」にゲスト出演したあなたが、さんまの秘話をいたずらっ子みたいな笑顔で語ったのを見たのだ。ある時あなたは偶然、極めて珍しく黙~って1人で居るさんまを見掛けて、陰からじっと観察。「見ぃ~ちゃった」と言わんばかりの顔をしたあなたに気付いたさんまが開口一番、「ちゃいますやんか!」と、静かだった自分を言い訳しだしたのだと。
私自身は2006年、記者数人で合同だったが、あなたを取材したことはある。「何でも聞いてや」。スーツ姿なのに、自宅の居間でランニング1枚という風情で話すあなたは、やっぱりどこまでもテレビで見る鶴瓶そのもので、うれしいやら、どこか残念やら。
ところが、このたび浅草であなたの落語を聞くうち、2年前に読んでゾッとしたあるブログの記憶が急激によみがえった。「ダウンタウン」の幼なじみで、あなたとも交流のある放送作家・高須光聖の「御影BLOG」、07年9月9日の記事だ。彼はあなたが落語「らくだ」で酔っぱらい役をまるで本当に酔ったように演じたのを見て書いた。少し引用させていただく。
「フジテレビの27時間で酔っぱらって、ち○ちんをテレビで見せちゃったこともあるあの鶴瓶さんだが、もしもあれが偶然起きた出来事じゃなかったとしたら…(中略)ある時から酒に酔うと我を忘れてしまうニューキャラが出てきた。怪しい点はここにある。『らくだ』で酔っぱらいを演じるために自らを師匠松鶴のように酔っぱらいキャラに仕立てるべく、数年前のあのころから少しずつ世の中の人達にすり込んでいこうという彼の策略だったとしたら…。(中略)あの人ならやりかねない。そんな人なんですあの人は」
ニセ医者役であなたが主演した公開中の映画「ディア・ドクター」は素晴らしい。無資格であることを隠しながら、過疎の村で老人たちに寄り添い続けてきたニセ医者を、善か悪かで語れますかと、映画は問いを突きつけてくる。ニセ医者は「飛んでくる球、夢中で打ってるだけや」と吐露するのだが、本人さえも自分を突き動かすモノの正体をつかめていない。あなたをキャスティングした西川美和監督は偉い、偉過ぎる。映画は瀕死の私をも、不思議な迷路遊びへと誘い出してくれた。
ディア・ツルベ、あなたは一体、何者なんだ。(敬称略)
※鶴瓶のJAPAN TOURは11月の大阪公演後も、来年2~4月に全国を回るセカンドシーズンがある。毎回豪華なゲスト落語家が登場し、ゾッとするほど楽しいので、おすすめします。チケットなどの詳細はwww.tsuruberakugo.jpで。
(宮崎晃の「瀕死の私にエンタメを」=共同通信記者)









