逆説的に夫婦バンザイ 『終の住処』 磯崎憲一郎著
2009年09月07日

『終の住処』 書き下ろし短編も収録
第141回芥川賞受賞作。著者が大手商社に勤務しながら執筆していることで、話題にもなった。芥川賞らしい純文学だ。
30歳をすぎて結婚した「彼」は、妻の不機嫌に悩む一方で、自ら不倫をくり返していた。一人娘を仲介役に、なんとか家庭を持ちこたえる日々。20年余りの歳月を、その時間そのものを表すがごとく、止めどない筆で描いている。
回想するまま書き止めたような文体で、ほとんど段落がなく、正直少し読みにくかった。が、人間の思考というのは、実際こういうものかもしれない。
一見苦悩に満ちた物語だが、数十年と続いた妻との不調和を見せることで、逆説的に「夫婦」、あるいは「生活」というものの図太さを描いている。夫婦だったらもっと2人で話し合えばいいのにー、なんて理想論は、この小説において意味がない。長い時間を共有した者同士には、理屈ではない強いつながりが、たしかにあるものだと感じた。成熟した描写もいい。
(新潮社 1200円+税)=尾崎英子・筆
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