2009年08月27日

激安値段の看板が置かれた立ち飲み居酒屋「いこい」=東京都北区赤羽
「せんべろ居酒屋」という言葉をご存じだろうか。せんべろとは、1000円でべろべろになるまで酔えるという意味。究極の酒飲みの作家、故中島らもが言い始めたらしい。「100年に1度」の経済危機、不況を反映してか、じわじわと人気を伸ばしつつある。
東京・赤羽の立ち飲み「いこい」は、そんな店の1軒。コの字形のカウンターに客がぎっしり。日本酒やハイボールが180円、煮込みやポテトサラダ、肉じゃがなどのおつまみは110円という驚きの安さだ。
客は自分の前のカウンターに小銭を並べている。「ハイボールと肉じゃが」と注文すると、さっと300円持っていかれ、10円のお釣りが返ってくる。なんか大人の駄菓子屋みたいで楽しい。
注文、受け渡し、会計の流れが何と素早く小気味いいことか。カウンター内を仕切る西野善夫さんは「1人の客に30秒以内で出さないと追いつかない」と事もなげだ。
長居をする客はあまりいない。2~3杯飲んで切り上げる人が大半。「好きなものをサッと飲んで食べられるのがいい」と自営業の男性(52)は話す。安いのはもちろんだが、そんなところがせんべろ居酒屋の魅力なのだろう。
せんべろ居酒屋好きが高じて、本を出してしまったのがライターのさくらいよしえさん。東京と周辺の70店を網羅した「東京★千円で酔える店」(メディアファクトリー)を出版した。
「せんべろという言葉ができる前から1000円未満で飲めるのを基準にしていた」とさくらいさん。求めるのは安さだけではない。「いい店には、店の“船頭”の元に客が集ってつくる一体感がある。酒よりも運命共同体的感覚に導かれている」と話す。
常連の存在も重要だという。「毎日通う人もいるので、店の料理人の腕が鍛えられる」。常連はいちげんの客にとって時には怖い存在でもある。「それも酒のさかなのうちかな」と、常連との付き合いも楽しんでいる。
「せんべろ居酒屋通いはやめられない」と話し、「本に載せた店よりいい店もあると思うので、探す楽しみを味わってほしい」と呼び掛ける。
さて、今夜はどの街に繰り出そうか。(共同通信記者・中村彰)
なかむら・あきら さいたま市在住で、ホームグラウンドは帰宅途中の赤羽、十条、王子などの東京北部。γ―GTPの数値と浦和レッズの勝敗が気になる中年。









