2009年03月19日

解説本から。左のジェスチャーは「ひっぱたくよ」。右のジェスチャーは「問題をたくさんかかえてしまって…」
「イタリア人は陽気」というイメージは、ナポリを中心とした南イタリアから派生したものではないだろうか。取材の途上で立ち寄ったナポリでそう感じた。
ナポリ人気質を象徴しているのが、道化のキャラクター「プルチネッラ」人気。地元出身のフランチェスカ・パッキャーノさんによると、劇や路上パフォーマンスではおなじみで「貧乏でいつもおなかをすかせているけれど、いつも楽しそうに歌い、楽器を演奏している」とか。
プルチネッラをはじめ、ベズビオ山や牛の角、卵といったナポリのシンボルをモチーフに使う現代美術家のレッロ・エスポージトさんを訪ねた。前衛的なオブジェからは地元への愛が伝わってくる。本人もおおらかで笑顔が絶えないナポリ人だった。
ナポリ人はひたすらしゃべるだけでなく、身ぶりもよく使う。勝手に理由を推測すると、(1)エネルギーが余っている(2)コミュニケーションするには言葉だけでは足りないと思っている(3)漁業にたずさわる男たちが、荒れ狂う海の上で交わすために必要だった―のどれか、かもしれない。
地元出版社が刊行した「Comme te l’aggia dicere?(何て言いたいの?)」は、ナポリ式ジェスチャーの解説本。男女数人(たぶん著者の知り合い)がジェスチャーした写真やイラストの横に、ナポリ弁、標準イタリア語、英語などの説明が付いている。本にするぐらい多様な身ぶりがあるのだ。
五本の指を束ねた手のひらを体側に向け、額の脇に向かって動かせば「おまえは何がしたいんだ」。さらに「たたきのめしてやりたい」「目を見えなくするぞ」など、けんか腰のジェスチャーも多いが、写真が普段着のおばあさんやおじさんなので、不穏さはなく、どこかユーモラス。
ただ、広場や街頭で立ち話に興じる人々も、市内のいたるところにある教会ではさすがに沈黙する。ひんやりとした教会の中には厳粛な気持ちにさせる見えない力が満ちている気がした。(共同通信記者・上野敦)
うえの・あつし 1971年横浜生まれ。2005年から共同通信文化部記者。07年から映画担当。







