旅情あふれるミステリー 「不連続の世界」 恩田陸著
2008年09月08日

「不連続の世界」 あの作品のあの人が再登場、というファンならではの楽しみもあり
夏は夜、月のころはさらなり。ということで、怖い美しいミステリー。「月の裏側」の登場人物の一人、音楽プロデューサー塚崎多聞を主人公にした連作短編だ。
なぜか不思議なことを呼び寄せる多聞。瀬戸内海に面した町で、日本海を臨む砂丘で、瀬戸大橋を渡る夜行列車で、さまざまな不可思議なことに出くわすのだが-。
国籍、年齢、職業といい、どことなくつかみどころがない登場人物たち。また旅人というのも、非現実的な存在。旅をする多聞のもとに、なぜ現実味のない人や出来事が集まるのか、その答えはラストの「夜明けのガスパール」によって導き出される。
静かな文体と旅情豊かな描写に、ノスタルジーをそそられる。the・怪談ではない。トリックを解明して、はい解決! でもない。刺激不足かもしれないが、ファンタジーの余韻を残すところが、いかにも恩田陸らしい。とはいえ、私にはこれくらいのホラー度で十分納涼…ってもう残暑か。
(幻冬舎 1600円+税)=尾崎英子・筆










