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書きたい話が多くて困った 「キダワールド」にハマる

2008年06月19日

記者のインタビューに応じるキダ・タローさん=大阪市北区
記者のインタビューに応じるキダ・タローさん=大阪市北区

「最近、だれに会った?」。放送(ラジオ、テレビ)担当になってから、友人や同僚にあいさつ代わりでこう聞かれることが多くなった。

人気の俳優やタレントを取材するのは放送担当の重要な仕事だ。インタビュー時間は通常30―40分で、長くて約1時間。できる限り相手の本音や素顔に迫りたいと思うのだが、話が全く盛り上がらず時間終了になることも。この時は原稿を書くのがつらい。

だが「ベテラン」へのインタビューは総じて楽しい。なんせ話の引き出しが多い! 取材に慣れていて、気付かないうちに話しやすい空気をつくってもらっていることもあるだろう。

「浪花のモーツァルト」こと作曲家キダ・タローさんもその一人だ。取材場所に現れたキダさんは「難しいことを聞くんと違いますやろな?」と笑顔で一言。「難しいことは聞けません」。私の緊張はほぐれた。

「モーツァルトよりショパンが好き」「有馬兵衛の向陽閣は3番まであった」…。興味深い話が次々に出てきて「キダ・ワールド」にどっぷりと漬かった1時間になった。後日、原稿に取り掛かると、書きたい話が多すぎて困った。

行数の関係で記事に盛り込めなかった要素の1つにキダさんが曲を作るまでの過程の話がある。歌詞を受け取ると、締め切りの2日ぐらい前までは何もせず、目につきやすい棚の上に歌詞をポンと置いておくのだという。キダさんの言葉を引用すると―。

「トイレに行く時とか外に出る時に嫌でも歌詞の前を通る。『あっ、これをやらなあかんのやな』と思うわけです。ほんまはすぐに曲を書けばいいんやけどね。プレッシャー逃げですわ」

では、曲を作る時はどのように切り替わるのだろう? 「しゃあないから作り始める」。簡潔で親しみを感じさせる答え。さらに「依頼を受けるたびにしんどい仕事を選んだなと思います。朝早く起きなくていいから選んだんですけどね」。

キダさんの言葉はユーモアにあふれ、77歳になっても創作意欲がみなぎっていた。「後期高齢者という言葉はダメですね。最低でっせ。まだまだいけると自分では思うてます」。つい口ずさむメロディーでこれからも楽しませてください。(不破浩一郎・共同通信記者)


ふわ・こういちろう 1999年に共同通信入社。松山、大阪、新潟をへて、昨年5月から文化部。放送担当になって1年が過ぎたが、テレビ局で有名人を見かけると今でもミーハー的に反応してしまう。