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「瞬発力」と「持久力」

 「47NEWS」には共同通信と加盟地方紙の記者たちが足で稼いだ記事が満載されている。楽屋落ち的な話だが、その記事を書く記者と記事の種類について少し触れてみたい。    

 記者に求められるのは知識、教養、好奇心、正義感、それに度胸と愛嬌...。う~ん、他にもいろいろあるが、今回は「瞬発力」と「持久力」に焦点を当ててみる。     

 まず、瞬発力から。  
 これは予期せぬ事件や事故の時に発揮される。「予知力」を持つ人は別として、普通の記者にとって、準備がほとんどないまま100メートルを一気に駆け抜ける力を求められることがある。まさに無酸素運動。  
 
 事件の概要をまとめた、木でいえば幹にあたる「本記」といわれる記事に、事件の持つ意味、背景などを分析した「解説記事」、事件を違った角度から切った「サイド記事」、事件のありようを再現する「雑観記事」など多種多様な原稿を短時間でそろえなくてはいけない。  
 物騒な話だが中東で爆弾テロがあったとすると、「テロが発生して何人犠牲になった」というのが「本記」。テロの持つ意味(テロ実行者側の思惑)、中東和平交渉の行方などに焦点を当てたのが「解説記事」、政局の変化や観光への波紋などは「サイド記事」、テロ発生の様子やその後の混乱などをまとめたのが「雑観記事」となる。ほかにも年表形式の「最近のテロ」も欲しいところだ。    
 
 「持久力」が必要なのが、ワシントン・ポストによるウォーターゲート事件報道のような「調査報道」や間近に迫った総選挙。  
 投票日をとりあえずのゴールとすると、3年ごとに選挙が来る参院選と違ってゴールがいつか分からない衆院選は、担当者にとってはいらいらが続く毎日となる。有酸素運動も、また辛い。  
 ようやく投票日が8月30日投票に決まった。マラソンなら「ゴールまであと何キロ」と分かり、それなりにスタミナ配分も可能だが、担当者は選挙がいつでも、それこそ明日でもいいように、日々の取材を欠かさず続けている。たとえマラソンからトライアスロンに変わったとしても...  

 ここでエピソードを一つ。予想を上回る日本人選手の活躍に沸いた2004年のアテネ五輪のこと。野口みづき選手が優勝した女子マラソンの感動を覚えている人も多いと思うが、共同通信五輪取材チームは、日本人3選手の金、銀、銅の最高の場合から、3選手とも入賞もできなかったケースまでなんと59本もの予定稿を用意した。  
 アテネと日本の時差が6時間で、結果判明が新聞社の朝刊締め切り間際の未明になるため、結果がわかってから原稿を執筆していては紙面に載せることが難しいためだった。それだけ用意しても、掲載されるのはたった1本だけなのだが...  

 何本もの予定稿が必要なのは裁判記事も同じ。「無罪」「有罪」と2種類だけでいいというならそれほどの手間ではないが、裁判によっては複雑なパターンが予想されることも多く、きめ細かい事前取材と準備が求められる。  

 「瞬発力」と「持久力」をいかにも別々のことのように書いてきたが、実はそれは相互に密接にからんでいる。たとえば、選挙を例にとると、開票日までは「主に」持久力が、そして開票日には今度は瞬発力が要求される。  

 こんな偉そうなことを書いていると「じゃあ、おまえはどうなんだ。マラソンできるの?短距離早いの?どっちもOKなの?」という声が聞こえてきそうだ。  

 う~ん...得意なのは「散歩」...かな。
                                       (47NEWS編集長 細川洋嗣)  
2009/07/13  
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