後世への最大遺物 【うーむ】

「金を儲けることは己れのために儲けるのではない、神の正しい道によって、天地宇宙の正当なる法則にしたがって、富を国家のために使うのであるという実業の精神がわれわれのなかに起らんことを私は願う。」(『後世への最大遺物』内村鑑三、岩波文庫)
これは、キリスト教の立場から非戦論を唱えた内村鑑三が、1894(明治27)年「後世への最大遺物」という題でおこなった講演の中の一節です。さらに、彼の言葉を拾ってみます。
「私に五十年の命をくれたこの美しい地球、この美しい国、この楽しい社会、このわれわれを育ててくれた山、河、これらに私が何も遺さずには死んでしまいたくない」
内村は後世に遺すものとして、まず「金、事業、文学」をあげています。社会に活用されるお金、多くの人に役立つ土木事業、そして、将来世代へ思想を遺す文学です。しかし、これらは誰にでもなしうる業ではなく、やり方しだいでは有害にもなります。だから、最大遺物ということはできないと述べています。
では最大遺物とは何か。目立った業績を残すことができなくても、「アノ人はこの世の中に活きているあいだは真面目なる生涯を送った人であるといわれるだけのことを後世の人に遺したいと思います。」彼は最後にこう述べ講演を終えました。「真面目に生きること」が最大遺物であると語ったのです。
雪印、コムスン、ミートホープと企業の「姿勢」が問われるような事件は枚挙にいとまがありません。CSR(企業の社会的責任)やコンプライアンス(法令遵守)といった言葉をよく耳にするようにはなりました。しかし、その実態は…。建て前だけかと疑わざるを得ません。
富は己のためではなく社会のために使うのであると実業の精神を説いた公共心。そして、誠実に日々を生きることが、「後世への最大遺物」だと看破した洞察力。100年以上前に語られた言葉にも私たちが学ぶべきもの多くあるようです。(肉きゅう)
投稿者 47news : 2007年06月28日 12:33
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コメント
小賢しいビジネスモデルを論じる本がベストセラーになっている現在の社会で、真面目に生きよと説くのはかなり勇気がいるんじゃない?
「真面目に生きてやってもいーけれど、それでアタシにどんなメリットがあるのかな? それを先に説明してくれないと、インセンティブ沸かねーよ」などと反論されたらどうしましょう。
投稿者 マルクス芸人主義 : 2007年06月28日 14:34
『後世への最大遺物』はいい本です。岩波文庫に入っている『デンマルク国』にも刺激を受けました。乳牛の代名詞ともいえるホルスタイン州をドイツに奪われ、国土が半分を失ったデンマーク国が青年グルンデッヒの旗振りによって残された荒野に木を植え、現在の沃野を作り上げる物語です。
投稿者 紫竹庵人 : 2007年06月28日 15:47
たしかに、ただのきれいごとだという批判は免れないでしょう。正直者が馬鹿をみる世の中で、一から十まで真正直に生きることは現実的でないと思います。
しかし、私は理想論が好きです。(それを言っちゃあおしまい、ですが言ってしまいました。)
科学技術は想像の世界を現実化してきましたし、理想を現実にすることが政治の役目だと思います。
結果は常に理想と現実の妥協ですが、その妥協の過程で最低限守るべき事は守る、やることはやる、という自律心を持つことが必要ですし、持たなければいけないと思います。
結局、同じことを繰り返しているだけで、質問の答えになっていなくてすいません。
ただ、悪事ばかり裏でコソコソやっていても、いつかしっぺ返しが来るんじゃないでしょうか。
投稿者 肉きゅう : 2007年06月28日 17:39
肉きゅうデスク、レスポンスありがとうございます。
希望や理想を見失わない、ということを自分に言い聞かせることが大切なわけですね。たしかに、内村の本がいまだに売れているということは、理想を捨てていない人がそれなりにいるということでしょうね。
投稿者 マルクス芸人主義 : 2007年06月29日 00:11

