キャラハン警部という“迷訳” 【そうだったのか】

同期入社の丸山徹兄が最近、『入門・アメリカの司法制度』(現代人分社)を上梓した。著者本人は上智大学英語学科卒であるから法律が専門ではない。90年代後半にニューヨーク支局に在勤してアメリカの司法制度にのめりこんだ結果、生まれた著書である。
先日、職場に電話がかかってきて、恥ずかしげに新著を差し出した。10年かかって仕上げたという。大手出版は相手にしてくれなかったというが、なかなか面白かった。僕自身、アメリカで取材中、保安官に拳銃をつきつけられた経験があり、「おー、アメリカにはまだシェリフがいたんだ」と驚かされた経験がある。日本にも戦争になるまで陪審員制度があって、国民に周知徹底するために大変な努力をしたという話も読んだことがある。
日本の司法制度は独仏の大陸の体系を導入したものに戦後、アメリカの制度を接木したと習ったが、戦前に陪審員制度があったという事実を知ったときは、「なーんだ日本にもあったんあだ」という感慨にふけった。自分が知らないだけでなく、多分多くの日本人も知らないだろうことがこの本には書いてある。大学に4年間通っても知らないことばかりである。
「警察官と保安官」という章では、アメリカの警察官の階級について説明がある。階級名は一番下からPolice officer、Inspector(巡査)、Detective(巡査部長)、Sergeant(警部補)、Lieutenant(警部)、Captain(警視)。上のいくほど"軍体調"になるのはなぜだろうか。たぶんその昔は軍も警察も区別がなかったからだろうと勝手に勘ぐっている。
『入門・アメリカの司法制度』で面白かった一部を抜粋して紹介したい。
クリント・イーストウッド主演の「ダーティー・ハリー2」の主人公ハリー・キャラハンの階級はインスペクター。巡査、つまりヒラの刑事である。上司の指示に従わず、現場でたびたび暴走することから巡査のまま出世を絶たれているが、超人的な力で難事件を単独で解決してしまう。ハリーは上司とことごとく対立するが、この上司の階級はルーテナントという設定。ところが日本語字幕ではキャラハンが警部、上司が「主任」となっていて、上下関係が逆転している。そもそも警察に主任という階級はない。何とも苦し紛れの「迷訳」だ。警部が殺人事件の捜査で、張り込みや被疑者の尾行をすることは、ありえないという常識があれば、こんな珍妙な翻訳は生まれないはずだ。(紫竹庵人)
投稿者 47news : 2007年06月29日 18:32
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コメント
引用だらけですが・・・
「アメリカの場合、州ごとで警察組織が違っていても、だいたい下から「Police Officer, Patrolman(巡査)」 → 「Sergeant(巡査部長)」 → 「Lieutenant(警部補)」 → 「Captain(警部)」 → 「Deputy Inspector(警視)」 → 「Inspector(警視正)」 → 「Deputy Chief of Police(本部長補佐)」 → 「Assistant Chief of Police(副本部長)」 → 「Chief of Police(警察本部長)」となるか、州によっては「Inspector(警視正)」の上が「Deputy Superintendent(副本部長)」 → 「Superintendent(警察本部長)」。」
で、シスコだけ異なっているらしい。
「サージェントは巡査部長で一緒だが、通常はロス市警、NYなどは警部がキャプテン、警部補がルテナント、インスペクターは警視だが、シスコ市警でインスペクターは専門捜査官のこと」
「ちなみに、イギリスの警察組織は下から「Constable(巡査)」 → 「Sergeant(巡査部長)」 → 「Inspector(警部補)」 → 「Chief Inspector(警部)」 → 「Superintendent(警視)」 → 「Chief Superintendent(警視正)」、この上が「首都警察, ロンドン警視庁(Metropolitan Police Force)」では「Commander(警視長)」 → 「Deputy Assistant Commissioner(副警視監)」 → 「Assistant Commissioner(警視監)」 → 「Deputy Commissioner(警視副総監)」 → 「Commissioner of Police of the Metropolis(警視総監)」となるのに対して、「ロンドン市警察(City of London Police Force)」では「Assistant Commissioner(副本部長)」 → 「Commissioner of Police(警察本部長)」、また他の自治体(地方警察)では「Assistant Chief Constable(警察次長)」 → 「Chief Constable(警察本部長)」と、3つのパターンがある。」
ということらしいですよ。
投稿者 通行人 : 2007年07月02日 18:41
先の方がおっしゃている通り、インスペクターは一般的には平巡査ではありません。
1作目からハリーはインスペクターなのだが、アメリカは統一の警察法がなく階級の呼び名が様々で翻訳者の悩むところ。
サージェントは巡査部長で一緒だが、通常はロス市警、NYなどは警部がキャプテン、警部補がルテナント、インスペクターは警視だが、シスコ市警でインスペクターは専門捜査官のこと(警視と認識したり、物によっては警部と訳してるが、そうすると上下関係がおかしく感じる)。
もちろん、一例ですが、巡査というのは一般的な認識ではないですね。警部のがまだわかります。
投稿者 通行人2 : 2009年04月28日 23:40
前お二人のおっしゃる通りです。
SFPDのinspectorは、特殊な用法で、アメリカの警察の一般的な職名(階級)としてはdetectiveに相当します。
(WIKIPEDIA(en)の「inspector」、「police rank」
「SFPD」などを引いてみてください。また、WIKIPEDIA日本語版の「アメリカの警察:階級」にも記載があります。
同じく「ハリー・キャラハン」にも階級(INSPECTOR)について、かっこ書きの注釈がついています(ちなみに以前「警部」となっていたのを私が修正しました。
NYPDでは、inspector, deputy inspectorはcaptainの上の
階級で、日本の警視長、警視クラスの幹部です。
LAPDでは、同じ階級でinspectorの代わりにcommander(海軍中佐)を使っています。警察官がより軍隊的な呼称を希望したからだ、と上記英語版WIKIは説明しています。
警察によっては、major(陸軍少佐)を使っているところもあります。翻訳するときには、各自治体警察(郡保安官事務所を含む)のHPなどで階級がどのように定められているかを確認する必要があるわけです。
英国の警察(スコットランドヤードなど)はまた全然異なった使い方になります。
本題に戻って、SFPDのINSPECTORは、SEARGEANT(巡査部長)の下のランクであり、日本の階級では巡査長、巡査クラスとなりますから、巡査と訳しても間違いとはいえないかもしれませんが、階級章のない制服組のOFFICERより上位の位置付けで、階級章も定められており、捜査官、刑事などの訳が適当でしょう。
LAPDではDETECTIVEは制服組のSEARGEANTと同格に位置付けられています。
投稿者 通行人3 : 2010年03月26日 12:27
訂正 SEARGEANT は SERGEANT が正しい。スペルミスです。
ごめんなさい。
投稿者 通行人3 : 2010年03月26日 12:33

