47NEWS >  スポーツ >  週刊TURNOVER >  コラム >  中村多聞 >  次節の相手はオービック 強力守備陣攻略が鍵

コラム

次節の相手はオービック 強力守備陣攻略が鍵

2017/09/07 【中村多聞】

オービック戦でのIBM小林選手のインターセプトリターンTD=写真提供・中村多聞さん
オービック戦でのIBM小林選手のインターセプトリターンTD=写真提供・中村多聞さん

オービック戦でのIBM小林選手のインターセプトリターンTD=写真提供・中村多聞さん

 僕が現役時代、ライスボウル優勝を目指して脇目も振らず努力していた頃は、普段の食事制限やトレーニングなどで時間が全くない状態でしたので、ゲームの夜だけはチームメートと宴会をして楽しい時間を過ごしていました。


 そして優勝の夢も叶い現役生活を終え、10年ぶりにコーチとしてIBMで現場に戻る時の条件に「練習後などに食事に付き合ってね」を設定してあったので、日本代表プレーヤーたちと毎週楽しい夜を過ごしていました。


 彼らは翌日の早朝から練習があるのでお酒は飲みませんが、僕は一人で飲むという感じでした。  そして今のノジマ相模原に行くときも同じ条件で約束したのですが、まあ何ともランニングバック(RB)陣が付き合いの悪いこと悪いこと。
 数度は行きましたが彼らは「イヤでイヤで仕方ない」「早く帰って妻子と会いたい」という姿勢を思い切り目で表現するので、こちらとしてもちっとも面白くないのでだんだん誘わなくなりました。


 そして会話がなくなり、メールやその他の交流も著しく減り、会うのは土日の練習時間だけ、という関係に落ち着いてます。


 しかし! チームに所属して1年を過ぎ、だんだん友達付き合いしてくれる人が出てきました。秋の初戦で無事勝利したこともあり、試合後は騒ぎ過ぎて明瞭な記憶すらありません。
 今後も選手には選手生活に影響のないように軽めに付き合っていただき、コーチングスタッフは翌日会社に行けなくなるほど僕との夜を謳歌していただきたいと思います。でも、シーズンが深まるにつれて問題も増えてくるので、遊びの話ばかりもしていられません。


 前回のコラムで書いたように、第1節から優勝候補同士の対戦「オービック対IBM」が9月5日の火曜日に東京ドームでありました。
 いやーすごい試合でした。どちらを応援するわけでもありませんが、ダイエット中ですので買い食いも一切せずに真面目に試合を見ていました。


 オービックの新人RB李卓選手(慶應義塾OB)が、平均9ヤードを超えるえげつない活躍を見せていました。
 社会人1年目の秋の初戦、僕など足手まといなだけで全くチームの役に立たなかったことを考えれば、本当にすごい選手です。
 オービックに入部する前にノジマの練習にも来てくれたのですが、気に入ってもらえなかったようです。とても残念です。


 そしてこのゲームで最もすごかったのが、21―17とリードしたオービックにゴール前まで攻め込まれ、これをねじ込まれてしまえばIBMは苦しかっただろうという場面です。


 オービックのQB菅原選手の投じたボールをゴールライン付近でキャッチしたDB小林選手が、そのまま98ヤードを走りきってタッチダウン。この小林選手、新人さんかと思ったら数年前から所属する選手だとか。


 僕がIBMに所属していた時は、失礼ながら顔も名前も記憶にないほどの目立たない選手でした。
 1部校出身ではないので、名前と経験ではなくヤル気と努力でこれまで頑張ってきたのだと思います。


 そんな彼がオービックのサイドラインを見事に走りきり、超ド級のカウンターパンチを食らわせたのです。
 これにはたまらず春の東日本チャンピオンもぐったりしたように見えました。その後の結果は皆さんご存知の通り、IBMが逃げ切って勝利。でもこのインターセプトリターンタッチダウンのドラマ、僕なりに解説しておきます。


 新外国人QBウーズィー選手をけがで欠くオービックは、ベテランQB菅原選手の強烈なリードでIBM陣深くまで攻め込みました。
 そしてもう一本パスを決めればというところで、李選手に渡すフェイクからのパスでした。しかし、ここで誤算が生じました。


 李選手は、ラッシュしてきたDLブルックス選手をとっさの判断でブロックしなければなりません。
 計画では漏れてくるはずがなかったでしょうから、非常に難しいプレーです。学生界には存在しないNFL級の体格と実力を持つ選手を、真正面からプロテクションするしかない場面でしたが、菅原選手の投げたボールがブルックス選手にチップされ、飛ぶ方向が変わったボールが小林選手の前に飛んで来たのです。


 DBですから、インターセプトして前に誰もいなければ俊足を生かして走り始めます。そこでまた奇跡的に良い場所にいたLBコグラン選手が小林選手をタックルできる可能性を残したオービックTE安東主将の前に出て邪魔をするのです。
 その後は普段から走り込んでいるのか、陸上選手のようなリラックスして伸びやかなストライドでしっかりと98ヤードを走りきった小林選手の勝ちでした。


 これまでの日本の守備選手は、インターセプトしてもその後にタックルされてファンブルしては元も子もないという理由であまりリターン後にタッチダウンを狙わないようになってしまいました。
 先日の大学生の試合でも、インターセプトして迷わずサイドラインに出てガッツポーズをするシーンがありました。


 僕の知る限り、NFLクラスのDBの選手が練習を含めてそんなことをするのを見たことがありません。
 みんなボールを持てば必死でエンドゾーンめがけて走ります。タッチダウンがしたいんです。でもインターセプトで満足しておけと、どこかの指導者が誰かに教えたんです。そのあとにファンブルロストされるのが嫌だからです。


 そういうリスク回避最優先志向のフットボールが日本中に蔓延し、見ている人がつまらなくなっていましたが、このプレーで日本のフットボールがいよいよアメリカに向かって再び動き出しました。歴史的なビッグプレーだと思いました。
 僕の中で、日本のフットボール史上最高のプレーだったのではないかと思います。いやー、本当にすごかった小林選手。あなたのことを知らなくて失礼しました。


 我々ノジマは次節、オービックとの対戦を控えていますので、オービック守備をどうやって切り崩すのかを考えなければなりません。
 しかしRBのやれることはDLジャクソン、ビーティーJrの大物外国人選手を擁するオービック守備に、ひるまず真っ向から勝負を挑むだけです。いやー、大変です。


 こちらはQBガードナー選手と同じミシガン大卒の新外国人、120キロから110キロにダイエット済みのRB「シオネ・ホウマー君」が新加入しました。
 デカいのに速くて器用な上に優しい人柄です。本国では彼がボールを持つと「Houuuuu―Maaaa(ホゥーーマーー!」)という掛け声があったそうなのです。


 昔はダラス・カウボーイズのFBジョンストン選手(現解説者)の「ムーース!」なんてのがありましたよね。是非次回は皆さんも「ホゥーーマーー!」と叫んでいただければと思います!


週末の女神

週末の女神

  • フットボールカレンダー
  • 順位
  • おっくんの4コマ漫画
注目動画

  • 作戦