47NEWS >  スポーツ >  週刊TURNOVER >  コラム >  小座野容斉 >  お気に入りは第43回のハドソン 歌姫たちのスーパーボウル

コラム

お気に入りは第43回のハドソン 歌姫たちのスーパーボウル

2016/02/12 【小座野容斉】

第50回スーパーボウルの国歌独唱で素晴らしい歌声を披露したレディー・ガガ(AP=共同)
第50回スーパーボウルの国歌独唱で素晴らしい歌声を披露したレディー・ガガ(AP=共同)

第50回スーパーボウルの国歌独唱で素晴らしい歌声を披露したレディー・ガガ(AP=共同)

第79回アカデミー賞の助演女優賞を獲得したジェニファー・ハドソン(AP=共同)
第79回アカデミー賞の助演女優賞を獲得したジェニファー・ハドソン(AP=共同)

第79回アカデミー賞の助演女優賞を獲得したジェニファー・ハドソン(AP=共同)

 第50回スーパーボウルは、デンバー・ブロンコスがカロライナ・パンサーズを24―10で破って17年ぶり3度目の優勝を飾った。
 ブロンコスのQBペイトン・マニングは、NFL史上初めて2チームで先発QBとして勝利した選手となった。試合の講評については専門家の手に委ねたい。一介のNFLファンとして、毎回楽しみにしている試合前の「ナショナルアンセム」、国歌独唱について語ってみたい。


 スーパーボウルの国歌を歌うのは、以前は男性歌手や大学のマーチングバンドなどが多かった。1980年代では、メジャーな女性歌手としてはダイアナ・ロス(82年、第16回)が頭に浮かぶくらい。
 人気テレビドラマ「チャーリーズ・エンジェル」出演のシェリル・ラッド(80年、第14回)、映画「ポリスアカデミー」のレスリー・イースターブルック(83年、第17回)のように、女優が登場することもあった。


 変わったところでは、第22回(88年)の国歌は歌ではなく、ハーブ・アルバートのトランペット独奏だった。レッドスキンズが、黒人QBダグ・ウィリアムズの大活躍でブロンコスに圧勝した大会だ。トランペット演奏の国歌は他にも何回かあったようだ。


 第25回(1991年)のホイットニー・ヒューストンの圧倒的な力強い歌唱は、今でも史上最高という人が多い。日本のNFLファンも、あの「星条旗」がベストだと考える人が大多数だろう。
 ただ私は違和感がある。あのパフォーマンスは今でも動画投稿サイトなどで見ることができるのでご覧になっていただきたい。


 最後の「フライオーバー」と呼ばれる米軍戦闘機の上空飛来まで、映像の中に、対戦したジャイアンツ、ビルズ両チームの選手やコーチなどは一切登場しない。画面の上に小さくインポーズしてあるロゴを除けば、スーパーボウルなのか、NFLのゲームなのかさえわからない。
 米国国旗や「GO USA」という横断幕を掲げるスタジアムのファンと、旗を掲げ敬礼する兵士、そして朗々と歌うホイットニーの映像しか映らない。


 湾岸戦争開戦から10日ほどたった、米国の戦時中に開催されたスーパーボウル。ホイットニーの歌にケチをつける気は毛頭ないが、露骨な国威発揚のために、意図的にスポーツを外した映像を撮ったのではないかとさえ思った。そういう違和感がある。


 ホイットニーのパフォーマンスが大きな話題を呼んだことで、国歌独唱がスーパーボウルの中でより重要なイベントとして認識されるようになったと思う。


 歌唱の際に、手話通訳が入るようになったのは、翌1992年の第26回大会だ。さらに1993年の第27回大会では、映画「愛は静けさの中に」で史上最年少でアカデミー主演女優賞に輝いたマーリー・マトリンが手話通訳に登場、歌手のガース・ブルックスの隣に立った。
 出場したカウボーイズの若きエースQBトロイ・エイクマンの凛々しい表情と、画面上で組み合わされたマトリンの映像は強く印象に残っている。マトリンは今年も手話通訳として3度目の登場を果たした。


 2000年代に入ると、この舞台がトップ級女性シンガーの勲章となり、グラミー賞などに輝いた「歌姫」たちが続々登場するようになる。
 02年の第36回大会にはマライア・キャリーが登場し、前年9月の同時多発テロで深く傷付いた米国を優しく慰めるような歌い方が印象に残った。翌03年、第37回大会ではディキシー・チックスが美しいハーモニーを聴かせてくれた。11年の第45回大会ではクリスティーナ・アギレラが、歌詞を間違えるハプニングも起きた。


 ビヨンセの国歌独唱は04年の38回大会だが、話題を呼んだのは13年第47回大会の記者会見の場だ。これには前段があって、直前のオバマ大統領就任式(再選)で、ビヨンセの国歌斉唱に「口パク」疑惑が持ち上がった。
 彼女は沈黙を守ったが、ハーフタイムショーに登場するスーパーボウルでは会見の義務があり、疑惑に対する質問にも答えざるを得ない。その会見の冒頭でビヨンセはアカペラで見事な「星条旗」独唱を披露した。終わった後で「なにか質問は」と一言。かっこいいと言うほかはなかった。


 私が一番好きな国歌独唱は09年、第43回大会のジェニファー・ハドソンだ。ハドソンは前年10月に母、兄、甥を殺害される悲劇に見舞われ、歌手活動をストップ。約3カ月ぶりに公的復帰の場として選んだのが、スーパーボウルの大舞台だった。前奏の時に緊張をほぐすようにほっと息を吐くハドソンの姿が印象深い。


 記憶に残る場面はまだある。歌い始め直後、画面には口髭のカジュアルな服装の男性が登場する。「ハドソン川の奇跡」で知られる、チェズレイ・サレンバーガー機長だ。
 1月にニューヨークで起きたUSエアウェイズ機の不時着水事故で、冷静沈着な操縦で乗客乗員155人全員の命を救った民間人の英雄だった。


 そして、恒例化していた、イラクやアフガン駐留米兵が整列して国歌を聴く映像も、この時は挿入されなかった。これも珍しいことだ。
 オバマ大統領が就任直後の大会であり、軍事的な力に頼らない国の姿勢のようなものが感じられたと言ったら、うがち過ぎだろうか。


 記念すべき第50回大会。レディー・ガガの国歌について、私の周囲からは「あんなに歌が上手だとは思わなかった」という反応が多く聞かれた。
 上手なのはもちろんだが、25年前、ちょうど折り返しの年だったホイットニーをかなり意識していたように感じられた。


 ガガの力強い歌声と、パンサーズのQBキャム・ニュートンの蹉跌、大願を果たしてしみじみうれしそうなペイトン・マニングの表情が一緒にタグ付けされて、私の脳裏に刻み付けられた大会となった。


週末の女神

週末の女神

  • フットボールカレンダー
  • 順位
  • おっくんの4コマ漫画
注目動画

  • 作戦