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コラム

エースRB放出し方針転換 バイキングズ、激動のオフ

2017/05/12 【生沢浩】

バイキングズを率いるマイク・ジマーHC(AP=共同)
バイキングズを率いるマイク・ジマーHC(AP=共同)

バイキングズを率いるマイク・ジマーHC(AP=共同)

 来年のNFLナンバーワンを決める「スーパーボウル」の開催地は、ミネソタ州ミネアポリスだ。ここにフランチャイズを置くバイキングズが激動のオフを迎えている。


 バイキングズといえば、わずか2年前に地区5連覇を目指したパッカーズを抑えて6年ぶりのディビジョン優勝を果たしたばかりだ。
 ディフェンス出身のマイク・ジマーHCが鍛え上げたディフェンスに、NFLを代表するRBエイドリアン・ピーターソンと若きフランチャイズQBテディ・ブリッジウオーターを擁するオフェンスで、NFC北地区の「一強時代」に幕を下ろすかと期待された。


 しかし、昨年はサマーキャンプ中にブリッジウォーターが左膝を脱臼するとともに前十字靭帯(ACL)の断裂する重傷を負った。
 シーズン序盤には頼みのピーターソンも膝の故障で戦列を離れ、たった1年でパッカーズに王座明け渡してしまった。


 このオフは長くエースRBとして貢献してきたピーターソンを解雇した。32歳という年齢や高い年俸、そして従来のラン中心からパス重視へのオフェンスの方針転換がその理由だった。


 今月初めにはブリッジウオーターの契約の5年目の権利を放棄した。これには少し説明が必要だ。
 リーグと選手間で結ばれている現行の労使協約ではドラフト1巡で指名された選手はチームと4年を越える長期契約を結ぶことは認められていない。
 この4年とは選手が補償などの条件なしで移籍が認められる完全フリーエージェント(FA)となる資格を得るために必要な年数である。ただし、チームが望めば契約を1年延長することができる。これを「5年目のオプション」という。


 オプションの行使が認められているのはチーム側のみで選手に選択権はない。チームは選手の新人時に締結した契約の3年目が満了した時点で、5年目のオプションを行使するか否かの決断をしなければいけない。
 ブリッジウオーターは2014年の入団だから昨季で契約の3年目満了を迎えた。バイキングズはブリッジウオーターの5年目のオプション行使を拒否し、同年1巡指名のLBアンソニー・バーには5年目を約束した。


 この措置はブリッジウオーターの故障がかなり深刻であることを意味している。現在の医学ではACL断裂を経験したアスリートは早ければ9カ月、遅くとも1年半後には復帰できるとされる。
 これに照らせば、ブリッジウオーターは2017年シーズンの中盤には復帰が見込めるのだ。にもかかわらずバイキングズはフランチャイズQBの2018年シーズンの在籍を保証しなかった。


 オプションを行使していれば2018年シーズンのブリッジウオーターは1230万ドルの年俸が約束される。バイキングズは現在の彼にそれだけの価値を見出さなかったのだ。


 一部ではもはやブリッジウオーターはフットボールへの復帰が不可能ではないかとの噂もある。それを懸念してバイキングズがオプション行使を見送ったのであれば道理だ。
 噂通りに復帰が不可能であればそのまま契約を終了させ、逆に完全回復が確信できるのであればその時点で改めて契約延長をすればいいのだから。


 こう考えると昨年のシーズン開幕直前にイーグルスからQBサム・ブラッドフォードを獲得したことが妙に意味深いものに思えてくる。
 筆者は当時、ブラッドフォードを今年のドラフト1巡指名権と交換で獲得したこのトレードに疑問を呈した。フランチャイズQBが1年後に復帰できるはずなのに、なぜ貴重な1巡指名権を失ってまでブラッドフォード獲得に動いたのか。


 ブラッドフォードに有無を言わせない実績があるならまだしも、過去の1巡1位指名としては期待外れの部類に入るQBだ。
 膝の靱帯断裂も2度経験しており、1シーズンを通して故障なくプレーできる可能性も極めて低い。


 しかし、この時点でバイキングズがすでにブリッジウオーターの復帰を絶望的と判断していたとしたら見方が変わってくる。
 早くもブリッジウオーターに見切りをつけ、代替となる人材をブラッドフォードに求めたとすれば昨年のトレードにも価値が出てくる。


 昨年のブラッドフォードは第2週からスターターとなり、以降は全試合に先発出場して結果的にパスの成功率71・6パーセントというNFL新記録を打ち立てた。
 このパスの精度を生かすためにバイキングズはそれまでにピーターソン仕様のオフェンスからショートパス多用にスキームに変換したのだ。これがピーターソンの放出につながった。


 バイキングズは今年のドラフトではQBを指名せず、FAでも補強をしなかった。ただウェス・ラント(イリノイ大)をドラフト外で獲得したのみだ。ブラッドフォード体制で固める意向なのだろう。


 ブリッジウオーターの膝の状態が正確に伝わっていないので予断は許さないが、5年目のオプションが行使されなかった事実は、彼の復帰の可能性に暗い影を落とすことは間違いない。


 開催地をホームとするチームが、スーパーボウルに出場することはないというジンクスは51回の歴史でいまだ破られていない。
 2015年にパッカーズから王座を奪った時には、2年後には地元でスーパーボウル出場という夢を描いたに違いない。


 前人未到の快挙か、それとも52例目で終わるか。気が付けばキャンプインまであと2カ月余り。オフはすでに半分を過ぎている。


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