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コラム

「神対応」に称賛の声 NFLカウボーイズQBトニー・ロモ

2016/11/18 【生沢浩】

新人QBプレスコット(右)の台頭で、自らは控えに回る意思を表明したカウボーイズのロモ(AP=共同)
新人QBプレスコット(右)の台頭で、自らは控えに回る意思を表明したカウボーイズのロモ(AP=共同)

新人QBプレスコット(右)の台頭で、自らは控えに回る意思を表明したカウボーイズのロモ(AP=共同)

 今年の広島カープの大活躍を象徴する言葉となった「神ってる」が流行語大賞にノミネートされた。これと対極の意味で、NFLファンの間で使われているものがある。それは「ロモってる」。


 大事なところでミスをする、期待されていたシーズンをけがで棒に振るといった、ついていない今風に言うなら「持っていない人」のことだ。こうしたシーンをいくつも経験してきたカウボーイズのQBトニー・ロモが語源だ。
 そのロモが記者団に前で行ったスピーチが話題となっている。


 ロモは今季のプレシーズンで背中を故障して長期欠場を余儀なくされた。その間に台頭したのが新人QBダク・プレスコットだ。
 ドラフト4巡指名で期待度は高くなかったプレスコットだが、チームは開幕戦こそ敗れたものの、その後は球団記録に並ぶ8連勝。第10週終了現在でNFLトップの成績だ。


 こうした状況の下、ロモの故障が癒えて出場登録された。世間の注目はプレスコットからロモが先発ポジションを奪回するか否かだ。好調のプレスコットをとるかロモの経験に頼るか。チームは難しい決断を迫られていた。


 そんな矢先である。ロモがいきなり記者団の前に姿を現し、3カ月ぶりに会見を行ったのだ。質問は受付けなかったが、思いのたけを吐露した。そして、自らが控えQBとしてプレスコットを支える宣言を行ったのだ。


 QB起用に関する論争が起きて、チームに不協和音が生じることを避けるための譲歩だ。チームが苦渋の決断をする前に自ら身を引いた。大人の対応、いや、これこそ「神対応」だ。


 「ダックは自らの手で先発の座を勝ち取った。僕の口から言うのはつらいのだが、彼にはその権利がある」とロモは用意したメモを読み上げながら記者団に語った。「彼はチームを8勝1敗に導いた。これは簡単にできることではない」とたたえた。


 その一方で、10年ぶりにバックアップに甘んじることの悔しさもにじませた。
 「もし、僕がもうプレーする意志をなくしたと思う人がいるなら、その人は戦って勝つことの醍醐味を知らない。闘志は今でも僕の心の中で燃えている。その勢いはむしろ、今まで以上かもしれない」とロモは語る。


 第10週のスティーラーズ戦に勝利した後、オーナーでありGMも兼ねるジェリー・ジョーンズ氏は次戦のレーベンズ戦はプレスコットが先発し、ロモはあくまでもバックアップとして試合に登録すると明言した。
 ここでロモがこの決断に不満を漏らすようなことがあれば、20年ぶりのスーパーボウル出場も現実味を帯びてきたチームの勢いに水を差すことになる。プレスコットも不要なプレッシャーを感じることになるだろう。これはロモが望むことではなかった。


 1990年代にQBとして活躍したトロイ・エイクマン氏の引退以降、フランチャイズQBが不在だったカウボーイズで、ドラフト外ながら肩の強さと思い切りのいいプレーでスターとなったロモ。大舞台に弱いなどの批判もあるが、カウボーイズへの愛は深い。それが伝わる会見だったからこそ、彼の言葉は感動を呼んだ。


 しかし、現実は美談で済まされるほど甘くはない。ロモは間もなく厳しい現実に直面する。バックアップとしてカウボーイズに残るか、36歳にして移籍を試みるか。
 ロモは2013年に球団最高額となる1億ドルの契約延長を行い、今年の年俸は2080万ドルにも及ぶ。来年はそれが2500万ドルに跳ね上がる。カウボーイズはロモを解雇すれば来年の年俸から500万ドルを節約できる計算だという。


 バックアップに過ぎないロモに、カウボーイズがここまでの高年俸を払うことはさすがにありえない。ロモが残留するためには大幅カットを受け入れて控えに転じることが条件だが、それをロモが受け入れられるのか。先発としてプレーしたいという情熱を抑えることができるのか。


 トレードもしくはフリーエージェントとして移籍する場合、ほぼカウボーイズ一筋にプレーしてきたロモは新たなオフェンスシステムを学ばなければならない。
 それだけではなく、新たなチームメートとなるレシーバーやOLたちとの呼吸を合わせなければいけない。


 現在のQBの需要はそれほど高くない。来年に新QBが必要と思われるのはブラウンズ、ベアーズ、49ersくらいか。
 これらのチームは、いずれも今季が不調で来年のドラフトでは高い順位の指名権を獲得できそうだ。QBが欲しければロモへ高い年俸を払うよりも新人の発掘、育成を選択するだろう。
 ロモが来年以降も先発QBとして活躍している姿はイメージしにくいというのが現実だ。


 今のロモの状況は2001年のペイトリオッツにおけるドルー・ブレッドソーの立場と酷似している。ブレッドソーはこのシーズンの序盤に胸部を負傷して戦列を離脱した。
 その間に先発を務めて活躍したのがトム・ブレイディだ。ビル・ベリチックHCはブレッドソーが完治した後もブレイディを先発として起用し続けた。


 そんなブレッドソーにも最後の晴れ舞台が回ってきた。スティーラーズと対戦したAFC決勝でブレイディが故障退場する。リリーフ登板となったブレッドソーがリードを守り切ってスーパーボウル出場を決めた。
 この1週間後に先発復帰したブレイディの活躍でペイトリオッツはスーパーボウル初制覇を果たす。


 ブレッドソーはその後、パスの能力を買われてビルズやカウボーイズに移籍してスターターを務めた。
 だが、最後の在籍チームとなったカウボーイズで不振のために先発の座を失う。ブレッドソーから最後の先発の座を奪ったのがロモだったのは何かの因縁だろうか。


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