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「中国の変化は速すぎて、今後の予想がつかない。最後に頼りになるのは金だよ」
パソコンの組立販売をする中堅IT企業「沐沢(もくたく)」で、同社を起業した双子の兄とともに経営に携わる馮和/ブン/(ひょう・わぶん)(45)。優に20畳はある自宅のリビングで、革張りの真っ白なソファにゆったりと座り、熱いコーヒーをすすった。戸外は氷点下五度の厳寒だが、白いタイル張りの床からは、床暖房のぬくもりが足の裏にじんわりと伝わる。
IT企業が集まる北京市北西部の一角。地下鉄駅の目の前という好立地の高級マンションが自宅だ。二〇〇四年に購入時の価格は八十万元(約1200万円)。ローンを組んだが、不動産高騰で旧宅の値段が2倍になり、売却益でローンを全額返済。さらに3年余りで、新居の資産価値も250万元に跳ね上がった。
北京市街地の新築マンション分譲価格は、過去1年間で平均約50%も上昇。北京五輪を前に、当局の金融引き締めがさらに強まることは確実で“五輪バブル”の崩壊もささやかれる。だが馮の考えは違う。「いったんは下がるだろうが、必ずすぐに再値上がりする」。既に投資先の部屋の物色を始め、五輪後に値下がりすれば底値を見極めて購入するつもりだ。
10年に万博が開かれる上海のマンションにも投資。資産価値の高騰で、北京市民の平均年収の75年分に相当する百八十万元をもうけた計算だが「まだ足りない」。
会社のオフィスで、仕事の電話に追われる馮和[7967]さん。会社は北京のIT企業が集まる一角だ=1月28日、北京市内(共同)
自宅から自転車で十分の距離にある会社は1994年、会長の兄、馮和沐(ひょう・わもく)(45)が2000元で設立した。96年に和/ブン/も入社、急激な発展を遂げる中国経済の流れをつかみ、昨年は年商1億2000万元の規模にまで急成長させた。
順風満帆にみえるが、IT業界は今、過当競争でパソコンの売れ行きが落ちている。五輪も仕事に影を落としている。
北京市当局は既に、五輪に合わせて車のナンバープレートの偶数と奇数によって通行を制限する交通規制を行う方針を発表。どの程度の期間行われるか不透明だが、市内にパソコン工場を抱える同社にとっては、部品や製品の搬送に直結する死活問題だ。
さらに五輪が開催される8月前後は政府機関が五輪絡みの仕事一色になるのは確実。和沐は「政府の許認可が必要な案件もあり、7―9月の三カ月間はほとんど仕事にならない」と嘆く。五輪前に、約200人の社員を150人程度まで削減せざるを得ない状況だ。
「今の一番の不安は五輪後に経済がどうなるか分からないことだよ」。和/ブン/が初めて顔を曇らせた。過熱する経済、高騰する人件費。会社の将来への不安の種は尽きない。「稼げる時に稼いでおかないとね」。今日も帰宅は深夜になりそうだ。(敬称略)(共同)