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中国黒竜江省の黒土地帯を流れる牡丹江は、冬には人が渡れるほどに厚い氷が張り詰める。
「子供のころ、この川でスケートをして遊んだ。初めてのスケート靴は北朝鮮製だった」。気温は氷点下20度以下。2月上旬の春節(旧正月)を前に北京から帰省した会社員の金美花(キム・ミファ)
(32)は、真っ白に凍った川面を指さした。当時、北朝鮮は中国の農村より豊かで、北朝鮮製の品物はあこがれの的だったという。
美花は中国の少数民族、朝鮮族。祖先は1908年、現在の北朝鮮の咸鏡北道から国境の豆満江(中国名、図們江)を越え、中国で稲作を始めた。村には、中国の全人口の約9割を占める漢民族と朝鮮族がほぼ半分ずつの割合で暮らす。
村の幹部を務める美花の父、金浩哲(キム・ホチョル)(56)は「北京五輪で中国と朝鮮が対戦するなら、同じ民族の朝鮮を応援する」と断言する。北朝鮮と韓国では、統一チームができないなら、貧しい北朝鮮に声援を送ると、朝鮮語に中国語を交えて話した。
村の平均年収は一世帯約2万元(約30万円)。農村では豊かな方だが、昨年収穫したコメは大量生産のブランド米に押され多くが売れ残った。
極寒の中に立ち上る湯気。近づいてみると、牛肉の即席販売が行われていた。村でもこのような光景が見られるのは珍しいらしい。威勢のいい掛け声が飛び交い、あれよあれよという間に牛はきれいにさばかれていった=1月20日、黒竜江省牡丹江市近郊(共同)
農民は冬の間は仕事もなく、マージャンをしたり、衛星放送で韓国のテレビドラマを見たりして過ごす。美花は八月の五輪に両親を北京に呼ぶつもりだが、「農民は食べていくのが第一。五輪に関心はない。年寄りの中には五輪がどんなものか知らない人もいる」と浩哲。暖かいオンドル(床下暖房)の上にあぐらをかき、キムチをさかなに蒸留酒「白酒」をあおるうちに本音が漏れる。
村の朝鮮族は戸籍上は約950人だが、実際には280人しか住んでいない。若者はブローカーに5万―6万元の手数料を支払い、韓国人との結婚や観光客を装い、言葉に困らない韓国に出稼ぎに行ってしまった。村に残ったのは老人と少数の子供だけだ。
浩哲は、出稼ぎで村人が潤っていることは認めながら、「家庭がバラバラになり、金もうけにかまけて民族の心が薄れてしまう」と懸念する。
朝鮮族はかつて朝鮮戦争で、北朝鮮を支援した中国義勇軍に加わり、韓国側と戦った。老人らは「北も南も関係なく民族は一つだ」「韓国がさらに発展すれば、中国での朝鮮族の地位も上がる」と話すが、祖先の故郷、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記については「民族心が強いので全面的に支持する」と口をそろえる。
朝鮮語で授業を行う村の民族学校は約十年前に廃校となり、建物は老人福祉施設となった。牡丹江でスケートをする子供の姿も今はない。
「私たちが民族の村を守る最後の世代。でも、もう力はあまり残っていない」。村の老人協会会長の朴明善(パク・ミョンソン)(65)は寂しげにつぶやいた。(文中仮名)(共同)