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国民的というより国家的? 劉翔バッシングと英雄の扱い

 可愛さあまって憎さ百倍、とでも言うのだろうか。国民的英雄として13億人民の絶大な期待を集めながら、戦わずして姿を消した陸上の劉翔に対する心ないファンの仕打ちである。
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 劉翔は18日の男子110メートル障害1次予選6組に登場。スタート直後にフライングのピストルが鳴ったが、その時、痛そうに足を引きずっていた。レースを棄権することに躊躇はなかった。

 アテネ五輪で優勝。「アジアの短距離走者で初の快挙」ともてはやされ、一躍、北京五輪の星に祭り上げられた。背に負うものが大きかった分、この日の「棄権」がもたらした反動もすごかった。中国の大手ウエブサイトの掲示板では「13億中国人民のメンツをつぶした」「敵前逃亡だ。弱虫!」などの心ない批判が相次いだという。

 中国中央がすぐ対応した。最高指導部で五輪を主管する習近平国家副主席が「みんなが棄権について理解している」との見舞い電報を劉翔に送り、共産党中央宣伝部は「寛容であるように」と国内メディアに指示し、批判的な記事を掲載しないよう要求。指導部が棄権への理解を示すことで、事態の沈静化を図ったと見られている。

 19日には、中国中央テレビで「申し訳なく思う。何とか頑張ろうと思ったができなかった」と劉翔が語るのを放送し、新華社は20日、当面は治療に専念し来季後半のレース復帰を目指す、とする孫海平コーチの話を伝えた。

 いずれも国営メディアの報道で、最新の情報をコントロールしながら発信しているように映る。国民的英雄というより、国家的英雄の扱いを受けている印象だ。そう言えば新華社は7月中旬、右足太ももを痛めている劉翔の故障を詳報し、連覇の可能性について「失敗のそれが成功のそれを上回っている」との悲観的な記事を配信していた。

 劉翔側は「1週間ほど前に古傷のアキレスけんを痛めた」ことを棄権の直接的な原因として説明した。だが、もっと深刻な状況が早くから進行していたのではなかったか、そんな推測もしたくなるような一連の流れである。 

【写真】スタート前に足の痛みに顔をゆがめる劉翔。この後、フライングによるやり直しを前に棄権した(共同)