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走らずに消えた中国の英雄 劉翔、古傷に敗れる

 中国の国民的ヒーロー、劉翔がトラックから静かに姿を消した。北京五輪の記録には「棄権」の文字を残しただけである。
トラックを去る劉翔

 男子110メートル障害1次予選6組。第2レーンの劉翔はスタート位置に着く前、神経質そうに顔をゆがめた。予兆があったのだろう。スタートの号砲が鳴り、すぐに他の選手のフライングでやり直しの合図。その時、もう劉翔は棄権を決めていた。足に張り付けたゼッケンをはぎ取り勝負の場に背を向けた。

 17歳の2000年、世界ジュニア選手権で4位入賞。その後、次々にアジア記録を更新し、03年パリ世界選手権では銅メダル。04年アテネ五輪では12秒91の世界タイ記録をマークして金メダルを獲得した。

 アジアから世界へとたのもしく飛翔を続ける青年に、中国の人々は夢を重ね合わせた。2年後には世界新も記録して、地元五輪での活躍に期待は高まるばかりだった。

 しかし、今年5月に右太ももを痛めるアクシデント。6月にはキューバ選手に自らの世界記録を破られた。国営の新華社通信は7月中旬、負傷に関する詳報を配信していた。「潜在性の肉離れで、短距離選手にとってはがんと同じ。完治させるのは難しく、これで選手生命が暗転した例は多い」と説明。さらに「失敗する可能性が成功のそれを上回っている」と連覇には悲観的な見通しを伝えていた。
 
 レース終了後、チーム関係者が説明した。「約1週間前に(古傷の)右アキレスけんを痛めた。(レース前の)ウォーミングアップで痛みが出た」。2日前の練習で古傷の痛みが激しくぶり返したのだという。メダルの重圧に加えて故障との戦い。右足に取り付いた疫病神が、劉翔から地元での栄光と国民の夢を奪いさった。
 
【写真】劉翔は戦えないままトラックを去った(上)記者会見で劉翔の棄権について説明しているうちにコーチが泣きだした(下)(いずれも共同)