上海に根付く日本の職人技 中国製グラブ五輪舞台へ
かつて野球文化のなかった中国に、グラブの生産技術が根付いている。日本人の職人が数年がかりで指導し、技術力は複雑なオーダー製品を作れるまでに向上。北京五輪ではキューバ代表選手らが「メード・イン・チャイナ」のグラブを手に決戦に臨む予定だ。

中国人従業員の張建華さん(右)を指導するグラブ職人の岸本耕作さん=6月26日、中国・上海市青浦区のミズノ上海工場(共同)
スポーツ用品メーカーの「ミズノ」(大阪市)は価格競争力を上げるため1996年、上海にグラブ工場を造った。
プロ選手のグラブを多く手掛ける職人の岸本耕作さん(50)は何度も上海に入り、革の縫い合わせからひもの締め方まで指導してきた。
グラブ作りは感覚に頼る部分が大きい。「ひもは小指が間に入らない程度に締める」。日本人なら分かるそんな指示も、現地の通訳を介すとなかなか通じない。
「まずはグラブの使い方から教える必要があった」と岸本さん。従業員の張建華さん(34)も「生まれて初めてキャッチボールをしたのは会社に入ってから」と笑う。
それでも従業員は着実に腕を上げ、サイズ変更や刺しゅうなど細かい注文にも応じられるようになった。日本のユーザーから「この職人にまた作ってもらいたい」と“指名”されることもあった。現在、中国での生産は日本の約五倍に上る。
とはいえ、日本のプロ野球選手らの感覚はデリケート。「ちょっとストレスを感じる」。岸本さんはイチロー選手にグラブを持参した時、独特の言い回しで指摘を受けた。「何となくしっくりこないという皮膚感覚にどう応えるか。データは自分の頭の中にある」と岸本さん。中国のレベルが上がっても、日本の職人の優位はまだ揺らぎそうにない。













