北京五輪が国際デビュー 若き旋盤工のハンマー
リンゴの皮をむくように、でこぼこした鋳物の球の表面を旋盤の刃が削っていく。陸上競技専門メーカー「ニシ・スポーツ」(東京)の千葉県船橋市の工場。二十三歳の旋盤工宮崎大輔さんが作るのは、アテネ五輪の金メダリスト、室伏広治選手(33)らが愛用するハンマーだ。

旋盤の刃でハンマーの球を削る宮崎大輔さん=6月20日、千葉県船橋市のニシ・スポーツ船橋工場
小柄な体に、鉄の塊をひょいと持ち上げる太い腕。緻密(ちみつ)な仕事が認められ昨年8月から投てき物の製造を全面的に任された。「競技で使われる責任は感じるが、すごい選手の用具を作っている実感はない」とはにかむ。
ハンマーは、金属製の球と取っ手を1メートルほどのピアノ線でつないでいる。規格の範囲内で、できるだけ球を小さく、ピアノ線を長くするのが「飛ぶ」秘訣(ひけつ)だ。同社はさらに、球の重心をわずかに外側へずらす独自技術で、より遠心力のかかる製品を開発した。
旋盤はコンピューター制御とはいえ、比重が微妙に異なる球を20グラムの誤差に収まるよう削るのは至難の業。1個ずつ1000分の1ミリの精度で旋盤を設定する。「最初は失敗ばかりだった」。先輩の作業を見てメモを取り、技術を体で覚えた。
国際大会では主催者が数社のハンマーを用意する。昨夏の世界陸上選手権大阪大会では、室伏選手ら決勝進出の8人全員がニシ・スポーツ製を選んだ。宮崎さんが先輩と作ったハンマーだ。
そして北京五輪。採用された国内メーカーは同社だけ。独り立ちした宮崎さんのハンマーが国際舞台にデビューする。
3月、宮崎さんは室伏選手と初めて顔を合わせた。「やっと作り手さんに会えましたね」と言葉を掛けられ、握手した。筋肉質の分厚い手。「取っ手はもっと大きい方がいいな」と職人にまた改善点が浮かんだ。
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北京五輪で使われる用具は「日本製」が少なくない。選手のこだわりに応え、愛用者は世界に広がる。競技を陰で支える職人技に迫った。













